研究課題/領域番号 |
21K08255
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
片山 鑑 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (90742247)
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研究分担者 |
土肥 薫 三重大学, 医学系研究科, 教授 (50422837)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ノックアウトマウス / アルブミン尿 / 血尿 / 巣状分節性糸球体硬化症 / ポドサイト / 足突起癒合 |
研究実績の概要 |
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)はステロイド抵抗性ネフローゼ症候群で特徴づけられる臨床病理学的疾患であり、大多数の患者は末期腎不全に至る。成人発症FSGSの約5-10%は約30個のポドサイト関連遺伝子が原因の遺伝性FSGSと判明している。本研究の目的は、CRB2遺伝子のFSGS発症に関する役割を、生前と生後にそれぞれポドサイト特異的にCRB2をノックアウトしたマウスモデルを作製して解明することである。当該年度では、まず生前にポドサイト特異的にCRB2をノックアウトしたマウスモデル(生前マウスモデル)でのデータを国際英文誌に論文公表した。生前マウスモデルでは、2ヶ月齢で高度のアルブミン尿と血尿を呈し、6ヶ月齢で糸球体硬化指数や尿細管間質線維化指数が有意に上昇することや透過型電子顕微鏡で足突起の癒合を有意に認め、各種ポドサイト関連タンパクの発現低下を認めた。ヒト培養ポドサイトでもCRB2をノックアウトすると、アポトーシスを引き起こしやすいことを同定した。 次に、生後にポドサイト特異的にCRB2遺伝子をノックアウトしたマウスが生前マウスモデルと同様に陰性コントロールマウスと比較して、4ヶ月齢(腹腔内投与2ヶ月後)の時点で高度のアルブミン尿と血尿を呈するだけでなく、6ヶ月齢(腹腔内投与4ヶ月後)の時点で糸球体硬化指数や尿細管間質線維化指数が有意に上昇することや透過型電子顕微鏡で足突起の癒合を有意に認めることを同定した。引き続き網羅的RNA解析を含めて解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、生後ポドサイト特異的CRB2遺伝子ノックアウトマウスの表現型解析であるが、2ヶ月齢の時点でCRB2 flox/flox & NPHS2-CreERT2マウスに対してタモキシフェン(0.15mg/g体重)をサンフラワーオイルに溶かしたもの(Tam群)あるいは何も溶かしていないサンフラワーオイル(NC群)を3日間連続で腹腔内注射として2ヶ月後(4ヶ月齢)あるいは4ヶ月後(6ヶ月齢)でTam群とNC群で解析に必要な動物数(約5匹ずつ)を確保した。尿検査(尿中アルブミン・クレアチニン比)・血液検査(血清クレアチニン・尿素窒素)・腎組織の光顕(PAS染色・マッソントリクローム染色)・電顕での評価を終えた。 生前ポドサイト特異的CRB2遺伝子ノックアウトマウスで、網羅的RNAシークエンス解析を行った。全腎での解析であったため、糸球体発現遺伝子の評価では偽陰性となった遺伝子も考えられたが、生前ポドサイト特異的CRB2遺伝子ノックアウトマウスで陰性コントロールマウスと比べてポドシンの発現が低下していることを同定した。ウエスタンブロットでは、ネフリン・ポドシン・ポドカリキシンの発現が生前ポドサイト特異的CRB2遺伝子ノックアウトマウスで陰性コントロールマウスと比べて低下していることも同定した。 CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集により不死化したヒトポドサイト培養細胞に対してCRB2ノックアウトを行い、限外希釈法によるシングルセルクローニングでCRB2ノックアウトヒト培養ポドサイト株の樹立を行い、成功した。2つの異なるクローンを確立し、野生型ポドサイトと比べてアポトーシスを引き起こしやすいことを見出して報告した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、生後ポドサイト特異的CRB2遺伝子ノックアウトマウスの網羅的RNAシークエンス解析を引き続き行う。今回は全腎ではなくマグネットビーズ灌流法によりTam群あるいはNC群から糸球体を単離して網羅的RNA解析を行い、Tam群で変動する遺伝子群を同定する。 CRB2ノックアウトヒト培養ポドサイト株の解析を引き続き、行う。ヒト培養ポドサイトで、思った以上にCRB2タンパクの発現が低下しており、CRB2ノックアウトと野生型の比較に労力を要したため、野生型でCRB2タンパクの発現が上昇する培養条件を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であり、研究打合せや海外での成果発表がなされなかったため。 翌年度分として引き続き細胞実験や免疫組織染色などに用いる試薬の購入費に充てる。
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