研究課題
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は難治性疾患であり、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈することが多い。成人発症FSGSの約5%はポドサイトの単一遺伝子異常が原因である遺伝性FSGSと判明している。本研究の目的は、Crb2遺伝子のFSGS発症に関する役割を、生前と生後にそれぞれポドサイト特異的Crb2をノックアウトマウスを作製して解明することである。初年度では、生前にポドサイト特異的にCrb2をノックアウトしたマウスモデル(生前マウスモデル)でのデータを国際英文誌に論文公表した。生前マウスモデルでは、2ヶ月齢で高度のアルブミン尿と血尿を呈し、6ヶ月齢で糸球体硬化指数や尿細管間質線維化指数が有意に上昇することや透過型電子顕微鏡で足突起の癒合を有意に認め、各種ポドサイト関連タンパクの発現低下を認めた。ヒト培養ポドサイトでもCRB2をノックアウトすると、アポトーシスを引き起こしやすいことを同定した。本年度では、生後にポドサイト特異的にCrb2遺伝子をノックアウトしたマウスが生前マウスモデルと同様に陰性コントロールマウスと比較して、4ヶ月齢(腹腔内投与2ヶ月後)の時点で高度のアルブミン尿と血尿を呈するだけでなく、6ヶ月齢(腹腔内投与4ヶ月後)と10ヶ月齢(腹腔内投与8ヶ月後)の時点で糸球体硬化指数や尿細管間質線維化指数が有意に上昇することや透過型電子顕微鏡で足突起の癒合を有意に認めることを同定した。網羅的RNA解析と培養ポドサイトでの形態変化を含めて解析を継続している。
3: やや遅れている
生後ポドサイト特異的Crb2遺伝子ノックアウトマウスの表現型解析であるが、2ヶ月齢の時点でCrb2 flox/flox & NPHS2-CreERT2マウスに対してタモキシフェン(0.15mg/g体重)をサンフラワーオイルに溶かしたもの(Tam群)あるいは何も溶かしていないサンフラワーオイル(NC群)を3日間連続で腹腔内注射として2ヶ月後(4ヶ月齢)あるいは4ヶ月後(6ヶ月齢)あるいは10ヶ月後(8ヶ月齢)でTam群とNC群で解析に必要な動物数(約5匹ずつ)を確保した。尿検査(尿中アルブミン・クレアチニン比)・血液検査(血清クレアチニン・尿素窒素)・腎組織の光顕(PAS染色・マッソントリクローム染色)・電顕での評価を終えた。生前ポドサイト特異的Crb2遺伝子ノックアウトマウスでの網羅的RNAシークエンス解析が全腎での解析であった反省点を生かし、今回ビーズ灌流法を用いて糸球体単離をTam群とNC群で行い、網羅的RNAシークエンス解析を行った。糸球体単離の回収量とRNA品質が想定外に不十分であり、実験を繰り返す必要があり、やや遅れた原因と考えられた。
今後は、単離糸球体からの網羅的RNAシークエンス解析結果からNC群と比べてTam群で変動している遺伝子群を抽出し、それらをターゲットとした解析を追加する。それぞれ同定された遺伝子を1つ1つデータベースと照合して、Crb2遺伝子が他の重要なポドサイト遺伝子と関与していないかを調べる。
コロナ禍であり、一部実験が滞り、10万円の残額が令和4年度に生じたが、令和5年度の請求額と合わせて必要な物品・試薬を購入予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件)
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