研究課題/領域番号 |
21K08256
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
矢野 裕 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10263021)
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研究分担者 |
Gabazza Esteban 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00293770)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 線維化 / 糖尿病性腎臓病 / アポトーシス / 細菌 / 高血糖 |
研究実績の概要 |
我々が開発したCorisinに対するモノクローナル抗体により、肺におけるCorisinにより誘導されるアポトーシスと線維化の抑制が認められることを報告した(Nat.Commu,2022)。我々が開発した腎線維化が発症するモデルマウス(腎特異的TGFβ1過剰発現マウス)で、腎の線維化とCorisinとの関係を検討した。本マウスでの尿中のCorisinの上昇と本マウスへのCorisinの投与による尿中アルブミンの上昇、メサンギウム領域の拡大、腎尿細管間質の線維化の促進が認められた。 Corisinと腎線維化の関係を検討する目的で、糸球体を構成するポドサイト系培養細胞を用いて検討を行った。CorisinおよびCorisin様ペプチド(1アミノ酸の置換)はスクランブルペプチドと比較して、ポドサイト系培養細胞のアポトーシス、カスパーゼ3の活性を有意に上昇させた。更に、TGFβ1の存在下では、低濃度のCorisinで著明なアポトーシスの増加が認められた。 更に腎臓の線維化と糖尿病の関係の検討を行った。腎特異的TGFβ1過剰発現マウスをストレプトゾトシンにより糖尿病状態として、腎の線維化について検討を行なった(Int J Mol Sci. 2022 Nov 17;23(22):14265)。糖尿病状態において、糖尿病でない腎特異的TGFβ1過剰発現マウスに比較して、血中TGFβ1は有意に上昇し、腎組織において糸球体での線維化の進展と、6-9週にかけてのクレアチニンの上昇が認められた。また同時に、糖尿病状態のTGFβ1過剰発現マウスでは、インスリン抵抗性状態が認められ、腎機能の低下への関与が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、ブドウ球菌属に属する細菌Staphylococcus nepalensisを同定し、菌の培養上清中から19アミノ酸残基で構成されるアポトーシス誘導ペプチドCorisinを発見し、線維化の進展を引き起こすことを示した(Nat Commun. 2020)。 更にCorisinに対するモノクローナル抗体により、Corisinの作用が阻害され、肺における線維症の進行および急性増悪を抑制することが示され、線維化の進展においてCorisinが重要な因子であり、治療ターゲットとして有用である可能性が示された(Nat Commun. 2022)。 また我々が開発した腎線維化の進行とともに経時的に腎機能が悪化する腎特異的TGFβ1過剰発現マウスを用いて、腎臓の細胞のアポトーシスと線維化が極めて密接に関係していることを解明し、その中で線維化におけるTGFβ1の重要性とトロンボモジュリンの腎保護作用を明らかにした。(Kidney Int,2020)。更に糖尿病モデルマウスでのトロンボモジュリンによるβ細胞保護作用も報告した(Cells,2021) アポトーシスを誘導するCorisinが腎臓の線維化の病態に関与する可能性を考え、Corisinが腎由来のポドサイト・尿細管上皮系培養細胞のアポトーシスを惹起し、ポドサイト系培養細胞ではCorisinおよびCorisin様ペプチドによりアポトーシス、カスパーゼ3の活性を有意に上昇させ、TGFβ1投与下で更に促進されることを明らかにした。また、腎特異的TGFβ1過剰発現マウスを糖尿病状態にしたところ、腎糸球体の線維化と腎機能の低下の促進が認められた。(Int J Mol Sci. 2022 Nov 17;23(22):14265.)。今後、更にCorisinと糖尿病性腎臓病との関係、Corisinによる腎線維化の機序について解析をすすめていく。
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今後の研究の推進方策 |
我々が開発したCorisinに対するモノクローナル抗体により、肺におけるアポトーシスと線維化の抑制が認められた。腎臓においてCorisinによって誘導されるアポトーシスの機序と、線維化が起こる機序について、腎特異的TGFβ1過剰発現マウス及び腎臓を構成する培養細胞を用いて検討していく。更に抗体によりアポトーシスが抑制される機序と、腎線維化の抑制効果について検討を行い、TGFβとの関係も検討していく。 高血糖ではTGFβ1の発現が上昇するので、糖尿病でのCorisinの状態と腎臓の線維化、腎機能の関係を、糖尿病モデルマウスと腎臓を構成する培養細胞を用いてTGFβとの関係を含めて検討を行う。特に高血糖とTGFβとの関係及び、Corisinによるアポトーシスと線維化の機序への高血糖への影響について解析を行う。更に、糖尿病患者さんの検体を用いて、尿と血液でのCorisinの濃度と糖尿病の病態、合併症との関係も検討をおこなう(倫理審査は承認済)。 Corisinが細菌由来のペプチドであり、各細菌由来のCorisin様ペプチドに関してすでに我々は解析を行い、共通に保持されているアミノ酸とCorisinの作用の関係を明らかにしつつある。また細菌からCorisinが分泌される機序について検討し、糖尿病の関係について解析を行う。更に、Corisinに対する制御方法をペプチドに関連する方法と、細菌に関連する方法について検討していく。
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