研究実績の概要 |
我々が開発したCorisinに対するモノクローナル抗体により、肺におけるCorisinにより誘導されるアポトーシスと線維化の抑制が認められることを報告した(Nat.Commu,2022,23;13(1):1558)。CorisinおよびCorisin様ペプチドではスクランブルペプチドと比較して、ポドサイト系培養細胞のアポトーシスを促進し、カスパーゼ3の活性を有意に上昇させた(Cells,2021,10(11):2885)。 更に我々が開発した腎線維化が発症、進展するモデルマウス(腎特異的TGFβ1過剰発現マウス[Kidney Int 2020, 98(5):1179-1192])を用い、ストレプトゾトシンによる糖尿病状態での検討では、腎組織において糸球体の線維化の進展と、6-9週にかけてのクレアチニンの上昇が認められた。また同時に、インスリン抵抗性状態が認められ腎機能の低下への関与が推測された(Int J Mol Sci, 2022,23(22):14265)。腎特異的TGFβ1過剰発現マウスにおいて尿中Corisinの上昇とCorisin投与による尿中アルブミンの上昇、メサンギウム領域の拡大、腎尿細管間質の線維化の促進が認められた(未発表)。更に、各種培養細胞に対してモノクローナル抗体を使用しCorisinとの関係について多角的な検討を行った。Corisinにより細胞老化マーカーの上昇と、上皮間葉転換が誘導されることを確認し、線維化における重要な機序であると推測した(未発表)。今後、Corisinと細胞老化を介する腎線維化の関係を各モデルマウス、培養細胞を用いて検討し、本機序と糖尿病性腎臓病の進展との関係を明らかにし、新規機序に基く診断、治療方法の開発をめざしていく。
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