研究課題/領域番号 |
21K08271
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今田 恒夫 山形大学, 医学部, 教授 (60333952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | microRNA / 腎臓病 |
研究実績の概要 |
研究計画書に従い、2021年度は研究1)ヒト腎疾患症例での腎病変と腎組織・尿microRNA・プロテオームの関連についての網羅的・経時的解析を行い、現時点までに以下の知見が得られている。①腎疾患症例における尿中総microRNA量と腎病変の関連について:様々な腎疾患をもつ160症例の腎生検症例と健常例の尿から microRNAを抽出し、ほぼ全例で尿中microRNAが検出可能であった。尿中microRNA濃度は尿蛋白と正相関したが、腎組織変化(糸球体内増殖性変化、硬化病変、間質線維化)との相関は有意ではなかった。 ②IgA腎症約100例における尿中microRNAと腎病変・機能低下の関連:1年間の腎機能(推定GFR)変化と尿中総microRNA量の関連を検討したところ、尿中総 microRNA濃度は1年間のeGFR変化との関連は有意ではなかったが、尿中miR-192とmiR-200c濃度は、糸球体増殖性変化と有意な負の相関を認めた。さらに、健常者と比較し、IgA腎症例で尿中での発現が大きく亢進しているmicroRNA数種類を同定し、治療反応性や腎予後との関連を解析中である。③糖尿病性腎症、微小変化型ネフローゼ、膜性腎症症例の血中尿中プロテオーム解析:糖尿病性腎症11例、微小変化型ネフローゼ14例、膜性腎症23例を対象に、質量分析計を用いて、百数十種類の血中尿中プロテオームを網羅的に解析し、尿蛋白定量のみでは鑑別が困難なこれらの疾患の推定に、retinol-binding protein 4、SH3 domain-binding glutamic acid-rich-like protein 3の尿中濃度やserotransferrin、immunoglobulin G、afamin、complement C3などの尿中血中濃度比が有用であることを報告した(Araumi A, et al. Biochem Biophys Rep. 2021)。これらのことから、尿中microRNAとプロテオームの発現プロファイルが腎疾患の予後や組織型鑑別の指標として検討対象となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に予定していたヒト腎生検例における尿検体の収集と解析はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前年度までの研究成果をもとに、主に、ヒト腎疾患症例、動物モデルでの解析を行う。①ヒト腎疾患症例において、IgA腎症で尿中での発現が亢進していた数種類のmicroRNAについて、microRNAの組織中発現量や発現部位が、腎組織病変や腎予後と関連するか解析する。腎生検組織中microRNA 定量・局在評価については、in situ hybridization法にて解析する予定である。②進行性腎障害動物モデルにおける腎病変と腎組織・尿microRNA変化の関連の検証:上記①の進捗状況に合わせて、進行性腎障害動物モデルを用い、ヒト腎疾患症例で関連が示唆されたmicroRNA の関与を腎組織・尿検体で検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、検体の収集と選別、最適な解析条件を決定するための限定的な研究が中心のため使用額はやや少なめであったが、次年度は、繰越金を使用して、幅広く解析を行う予定である。
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