研究課題
これまで腎組織の網羅的発現解析から、高血圧/糖尿病に特異的な遺伝子、アンジオテンシンIV受容体(AT4)を抽出した。この分子はレニン-アンジオテンシン系の構成要素であると同時に、インスリン調節性アミノペプチダーゼ(IRAP)と同一分子であり糖代謝にも関与する。即ち血圧異常と代謝障害とを繋ぐKey Moleculeである可能性が示唆される。そこで可溶成分に対しポリクローナル抗体で感度1.0μg/mlの測定系を確立し、生活習慣病のバイオマーカーとなることが期待された(科研費C、平成22~24年)。次にモノクローナル抗体による改善を図り、感度20 pg/mlの高感度測定系を独自開発した(科研費C、平成25~27年)。さらに同遺伝子多型を解析し、症例対照研究で、血漿濃度は、肥満者、CKD症例で有意に低値となった。またAT4の1遺伝子多型により濃度差のあることが判明し、測定系の正当性が裏打ちされるとともにAT4濃度は遺伝子型の中間表現型となり得るという重要な可能性が出てきた(科研費C、平成29~令和元年)。今回、AT4(遺伝子型と血漿濃度)が前向き評価により心血管病、透析導入、死亡などとの相関を解析し、さらに内分泌疾患や妊娠関係病態と相関を解析する。これによりバイオマーカーとしての意義と有用性を一層高める。2年目は予定通り、1)対象・試料の収集とデータベースのさらなる整備。2)ほぼ方法の確立している測定系に対するロット間ばらつきの調整、希釈限界の適正化の継続。3)対象を従来の高血圧、CKD、糖尿病等から内分泌系疾患や妊娠関連病態へ広げつつの測定推進の遂行。4)遺伝子多型の解析の適正化等を実施し得た。
2: おおむね順調に進展している
計画通り2年度目として、対象・試料の収集とデータベースのさらなる整備を実施した。前年度と同様の濃度測定、遺伝子多型解析を行い、対象症例数を増やしつつ、疾患病態における意義の解析を行った。「中間的な結果の分析とまとめ」を行い研究方針の微修正等を実施し得た。
計画通り3年度目として、対象・試料の収集とデータベースのさらなる整備を継続しつつ、前年度、前々年度と同様に濃度測定、遺伝子多型解析を進める。また対象症例数をさらに増やしつつ、疾患病態における意義の解析を一層進める。最終的なまとめから学会発表、論文作成を進める。
実験、測定、解析作業が順調に進み、測定キット等の節約ができたこともあり次年度使用が生じた。最終年度に学会発表や論文作成・校閲・投稿・掲載に一定金額の予算執行の必要性が見込まれるため、次年度使用額への持ち越しが有意義な予算執行計画と判断した。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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巻: 35 ページ: 1156-1161
10.1080/14767058.2020.1743665.
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