研究課題
1. 腹膜透析(PD)患者のPD排液から得られる中皮細胞の初代培養細胞(HMPC)を用いて補体活性化を検討した。3つの膜補体制御因子(CReg)、CD46、CD55、CD59について、PD継続期間の前後1年でPCR、FACSを用いて、mRNAと蛋白の発現を観察した。結果は、CD46、CD55、CD59の中で、CD46とCD59の発現が、mRNAレベルと細胞表面蛋白発現の両方で有意に増加していることを確認した。一方で、CD55の発現には有意な変化を認めなかった。HMPC作成のために回収したPD排液中のsC5b-9レベルも低下していることを示し、一部を学会発表まで進めた。2. 腹膜中皮細胞上のCReg発現の変化が起こる原因について、現在、長期腹膜透析が、生体の腹膜に与える影響、特に補体活性系とその制御系のバランスに与える影響の検討を継続して進めている。現時点で、腹膜中皮細胞の解析が不十分であり、腹膜中皮細胞(Met-5A 細胞株)の解析を継続中である。本年度は、乳酸、ブドウ糖、pHの影響、特に前者は反復刺激による影響を確認し、一部を学会発表した。引き続き、次年度、1と2について、論文化を進めるための作業を進める。また、single cell解析はデータベースで行い、次年度は、1と2で得られた結果と比較検討を進める。3. 腹膜傷害への治療介入を期待して、現在、補体の終末経路を抑制する中和抗体を用いて、真菌性腹膜炎の実験動物モデル(ラット)での炎症細胞集積、脈管新生、及び線維化進展などの腹膜傷害の進展への補体終末経路の役割の検討を進めている。
3: やや遅れている
実験計画1についてはほぼ計画通りに進んでいる。我々の研究グループの継続研究によりデータの蓄積が進んだ。経時的に腹膜透析患者から得た、ヒト腹膜中皮細胞初代培養細胞(HMPC)における膜補体制御因子のPCRによるmRNAとFACSによる蛋白発現の変化を捉えることができ、今年度は、成果の一部を第27回 日本腹膜透析学会で報告した。実験2の腹膜組織の解析についてはまだ解析途中である。実験3はヒト中皮細胞であるMet-5A細胞株を用いて、1.で得られたHMPC上のCRegの変化について、PD液の各成分による解析を進めている。一定のデータの蓄積は進み、再現性の取れた結果について上記1と共に学会で報告した。また、既存のsingle cellから得られたデータベースを用いて、我々が得つつある結果と主に次年度以降に解析を進めていく予定である。実験4について、これまで我々の開発した真菌性腹膜炎動物モデルを用いて、in vivoでの補体の役割、補体治療の可能性について、検討してきた。本年度はこれまで未知の補体終末経路に注目して、中和抗体を用いた動物を開始した。次年度以降も、解析を進めていく。
実験計画1については、これまでに明らかにした結果について報告し、不足している母集団を増やしてきた。その結果、再現性がほぼとれたため、次年度以降、結果をまとめて公表していく方向で進めていく。実験2、3について、今後は腹膜炎、尿毒症物質、腹腔内へのPD液成分の影響等、腹膜透析による腹膜中皮細胞、その他細胞上のCReg発現への影響、補体系への影響について、実験を進めていく。実験4について、真菌性腹膜炎動物モデルにて今後補体終末経路活性化阻害抗体を用いて実験を進めていく。また、上記の結果をまとめて公表していく。
購入試薬について、海外からの輸送による遅延、特にプラスチック製品の欠品が多く、代替品を探す作業が多く、実験の計画に多少の影響が出たため。腹膜炎、尿毒症物質、腹腔内へのPD液成分の影響、腹膜透析による腹膜中皮細胞、その他細胞上のCReg発現への影響、補体系への影響を検討するために使用する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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