研究課題/領域番号 |
21K08277
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
貝森 淳哉 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (70527697)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00379166)
坂口 悠介 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80756817)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低Mg血症 / 低K血症 / 高血圧 / Ankyrin 3 / Enac / Kv1.1 |
研究実績の概要 |
本症例は、低カリウム(K)血症、低Mg血症を指摘されていた。家族歴として母にも若年からの高血圧と低Mg血症があった。本家系の全エクソームシークエンスを行った。罹患者である本症例と母に存在し、非罹患者の妹に認めない遺伝子変異を70の遺伝子に認めた。この中から、我々はANK3に着目した。 野生型ANK3発現ベクターを基に、本症例の変異ANK3発現ベクターを作成した。これら発現ベクターを用いて、変異Ankyrin-3の分子挙動を検討した。HEK293細胞に野生型ANK3と本症例の変異ANK3を遺伝子導入したところ、野生型に比し、変異型Ankyrin-3の発現量は顕著に増加していた。Ankyrin-3の半減期をcycloheximide chase assayで評価したところ、野生型に比して変異型Ankyrin-3の半減期は延長していた。したがって変異型Ankyrin-3の発現増加は分解の抑制によるものと考えられた。Ankyrin-3のアミノ酸配列にはユビキチンE3リガーゼCDC20の認識部位であるD-box、KEN-boxが含まれる。したがって、Ankyrin-3の細胞内分解はCDC20によるユビキチン化が関与していることが予想された。実際にCDC20 shRNAによるCDC20のノックダウンはAnkyrin-3発現を増加させた。また、野生型Ankyrin-3に比し、変異型Ankyrin-3はCDC20との結合が減少するとともに、ユビキチン化や蛋白分解産物の減少が免疫沈降法で確認された。また、本症例で認めた変異ANK3によるin vivoでの分子疾患メカニズムを詳しく解析する目的で、ANK3 knock-in mouseを作成した。hetero ANK3 knock-in mouseにおいては、変異Ankyrin-3蛋白の発現増量及びEnacの活性化を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低Mg血症、低K血症を伴う高血圧症を呈する本症例の原因遺伝子としてANK3を見出してきた。この変異AKN3がどのようにして本症例の病態を引き起こしているのかに関して、決定的な発見は、変異AKN3から発現する変異Ankyrin 3蛋白が、野生型に比べて発現が増強しているという事であった。このメカニズムとして、変異ankyrin3が、ユビキチンE3リガーゼCDC20と結合しにくくなっているという事を見出してきた。また、通常の生理的な環境において、ankyrin3の分子量の制御を通して、MgやKの制御が行われている可能性が出てきている。また、変異ANK3と発現する、ANK3 knock-in mouseも作成に成功しており、今後このマウスを用いて、詳しい病態解明が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに作成したANK3 knock-in mouseを用いて、病態生理学的な検討を行う。通常食及び低Mg,高Na食による高血圧状態の導入と、それぞれの食事における血圧や電解質の野生型マウスとの比較を行う。また、通常の生理的な環境において、ankyrin3の分子量の制御を通して、MgやKの制御が行われている可能性に関して、詰めの研究を行う。
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