研究課題/領域番号 |
21K08279
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内海 仁志 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80815655)
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研究分担者 |
澁谷 正樹 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40865002)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 小胞体ストレス / リアノジン受容体 / RyR安定化薬 |
研究実績の概要 |
小胞体(ER)は細胞内のタンパク質組み立て工場であり、細胞内カルシウムイオン(Ca)制御は重要な役割を果たす。細胞に過度のストレスがかかると、ER内で不良タンパク質が蓄積するERストレス状態となり細胞死を引き起こし、ERストレス病を発症する。ERのCa放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR2)の機能異常が、ERストレスを誘導し、慢性腎臓病(CKD)もERストレス病であり、RyR2の安定化がCKDの進展を抑制すると仮説を立てた。 リアノジン受容体(RyR2)構造安定化 {①薬理的介入:RyR安定化薬の慢性投与 ②遺伝的介入:RyR2遺伝子改変(RyR2-V3599Kノックイン→カルモジュリン(CaM)がRyR2に高親和性に結合)} による慢性腎臓病(CKD)の進展抑制を5/6腎臓摘出術(Nx)したマウスCKDモデルで検証した。 5/6腎臓摘出術後の野生型(WT)マウスでは、糸球体濾過量(GFR)は低下し糸球体は硬化した。しかし、RyR安定化薬を慢性投与したWTマウスとRyR2-V3599Kノックインマウスに5/6腎臓摘出術を行っても、GFRは低下せずに糸球体の硬化が抑制された。さらに、腎細胞のERストレス応答を培養足細胞・尿細管細胞において検証した。足細胞・尿細管細胞においてRyRとCaMの共局在を確認し、RyR2構造安定化(薬理的/遺伝的介入)が、ERストレス誘導薬ツニカマイシン誘導性の過剰なERストレス応答を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リアノジン受容体(RyR2)構造安定化 {①薬理的介入:RyR安定化薬の慢性投与 ②遺伝的介入:RyR2遺伝子改変(RyR2-V3599Kノックイン→カルモジュリン(CaM)がRyR2に高親和性に結合)} による慢性腎臓病(CKD)の進展抑制を5/6腎臓摘出術(Nx)したマウスCKDモデルで検証し、腎細胞のERストレス応答を培養足細胞・尿細管細胞において検証した。in vivoとin vitroでの検証が概ね予定通りに進行したため。
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウス(WT)とRyR2遺伝子改変マウス(V3599K)に、Nxをおこない、12週間観察した。Nx12週間後のWTでは、糸球体濾過量(GFR)は低下し糸球体が硬化した。しかし、薬理的介入(RyR安定化薬を慢性投与)したWTとRyR2遺伝子改変マウス(V3599K)のNx12週間後では、GFRの低下と糸球体の硬化が抑制されていた。RyR安定化薬の慢性投与/遺伝子改変によるRyR2構造安定化がCKDの進展を抑制することが示唆された。足細胞と尿細管細胞におけるERストレスとER Ca動態を検証し、RyR2構造安定化がCKDの進展を抑制する機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
特許申請を優先し学会発表を行わなかったため、旅費を全く使用しなかった。 また、顕微鏡の購入費用を他の研究予算から支出したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、解析ソフトウェア、ELISAキット、抗体などに使用する計画である。
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