研究実績の概要 |
本研究は、腎臓の尿細管細胞の浸透圧応答転写因子NFAT5 (nuclear factor of activated T-cells 5)を介した、血圧調節の機序を明らかにすること、また、食塩感受性高血圧への関与を明らかにすることを目標としている。 本年度は、尿細管細胞内NFAT5の、腎間質の免疫応答における役割を明らかにすることを目的に実験を進めた。Basal condition下に腎髄質を用いて行ったTSS-Seqにより発現変動した遺伝子群について、clusterProfilerによるGene Ontology解析の後、さらにSTRINGを用いて遺伝子間の相互作用の解析を行ったところ、NFAT5KOマウスで発現が増加したinnate immune responseに関する遺伝子群の解析により、特にcytokine production, lymphocyte activation, macrophage activation, monocyte chemotaxisの活性化が、さらにadaptive immune responseに関する遺伝子群の解析により、T-cell activation, B-cell activation, regulation of cytokine productionが活性化していることが示唆された。 また、TSS-Seqの結果の裏付けのために行ったreal time PCR法にて、KOマウスにおいて免疫応答に関連する遺伝子群(Ccl2やTNF-a、IL-1bやF4/80、TGF-bなど)の発現増加と、高食塩食を与えることでこれらの発現がさら増加する傾向を確認した。 さらに、本研究に付随して交付を受けた独立基盤形成支援によりセットアップした、インキュベーター内設置の生細胞観察顕微鏡を用いて、培養細胞内に発現させたGFPタグ化NFAT5蛋白の動態観察を可能とする実験系を確立した。
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