血管石灰化は慢性腎臓病患者において、生命予後および生活の質QOLを左右する重要な病態である。近年の研究では、この石灰化病変の形成に血管平滑筋細胞の骨様細胞への形質変換が重要な役割を果たしていることが示されている。すなわち、慢性腎臓病に伴うリン負荷といった刺激が、平滑筋細胞において平滑筋分化マーカーの消失と骨分化マーカーの獲得を引き起こし、石灰化病変を形成する。 本研究では、この形質変換にエピジェネティックな制御機構が関与している可能性を検討している。平滑筋分化マーカーの消失には、アクティブなヒストン修飾が減弱し、骨分化マーカーの発現にはアクティブなヒストン修飾が亢進していることを見出している。今後、ヒストンの抑制的なメチル化修飾に焦点を当てて、それらがどのように変化するのか、さらにはヒストンメチル化修飾の変化を制御した際に血管平滑筋細胞の骨様細胞への形質変換を抑制できるかどうか、また、血管石灰化を抑制できるかどうか解析を行う。培養血管平滑筋細胞にリン負荷を行うと、平滑筋特異的なアクチンやミオシン重鎖の発現が低下するが、これにはそれら遺伝子のプロモーター領域におけるヒストンの修飾変化が伴っていた。また、骨分化マーカーの発現亢進もみられるが、これにも骨分化マーカー遺伝子のプロモーター領域におけるヒストン修飾変化が随伴していた。それらのメカニズム解明を進めている。
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