研究課題/領域番号 |
21K08285
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁 順天堂大学, 医学部, 教授 (10468572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IgA腎症 / 粘膜応答免疫 / 糖鎖異常IgA / Toll like receptor / APRIL |
研究実績の概要 |
本研究では、IgA腎症モデル動物とヒト扁桃細胞を用いて、TLR9の過剰活性化がおこるメカニズム、TLR9/TLR7の相補的制御について解明し、TLR9/7のシグナル伝達経路を抑制するヒドロキシクロロキン(HCQ)をはじめとする粘膜免疫応答を制御する治療法の基礎を確立することを目的とする。 初年度に施行した解析より、マウスIgA腎症においては、TLR7とTLR9のいずれの活性化も関与しており、血中の糖鎖異常IgA免疫複合体の産生亢進による、IgA腎症の増悪が惹起されることを確認した。 令和4年度では、さらにn数を増やして、マウスIgA腎症におけるTLR7、TLR9の活性化の関与について確認した。TLR7とTLR9のどちらがIgA腎症の病態に深く関与しているのかをCRISPR-Cas9を用いたIgA腎症モデルマウスのTLR9ノックアウト(KO)、TLR7KO、およびTLR9とTLR7の共通の下流であるMyD88KOモデルを作製し、腎症の表現系とTLR9/TLR7シグナルの活性化の関連を比較検討した。TLR7KOとTLR9KOマウスでは、糸球体のIgA、IgG、C3の沈着が軽度低下している傾向がみられたが、有意差は認められなかった。一方で、MyD88KOマウスでは、血中の糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体の産生低下がみられた。さらに、糸球体のIgA, IgG, C3の沈着がほぼみられず、メサンギウム増殖性病変も明らかに減少していた。しかし、MyD88KOマウスは感染症に弱く短命であり、長期的な解析には不向きであることも明らかとなった。 次に、IgA腎症モデルマウスにIgA腎症の新規治療法として、TLR9/7のシグナル伝達経路を抑制するヒドロキシクロロキン(HCQ)の効果検証を開始した。今年度ではまだ解析n数が十分ではないが、糸球体のIgA, C3の沈着が確実に低下している傾向がみられ、さらに検証を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間を通しては、ほぼ予定通りの実験計画を推進できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、、マウスIgA腎症においては、TLR7とTLR9のいずれの活性化も関与していることが示され、MyD88KOマウスの表現型の解析からも、TLR7、TLR9の両方のシグナル伝達を抑制する必要があると示唆された。そこで、IgA腎症モデルマウスにIgA腎症の新規治療法として、TLR9/7のシグナル伝達経路を抑制するヒドロキシクロロキン(HCQ)の効果検証を開始した。今年度ではまだ解析n数が十分ではないが、糸球体のIgA, C3の沈着が確実に低下している傾向がみられ、令和5年度ではさらにn数を増やし検証を続けていく。さらにIgA腎症の治療で摘出されたヒト扁桃細胞を用いて、 HCQを48時間共培養し、培養上清中の糖鎖異常IgA1、IgG-IgA免疫複合体を解析し、TLR9/TLR7の下流のシグナル(MyD88, NF-κB, IFN-α, IL-6, APRIL)の発現に対する効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はほぼ予定通り進捗したが、30,742円と若干の研究費を残した。次年度に移行し無駄なく使用する。
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