研究課題
TLR9の過剰活性化調節機構を解明するために、IgA腎症発症モデルにて、TLR9/TLR7およびアダプター分子であるMyD88の発現や、TLR9の発現に関わる転写因子であるNFκBを解析したところ、MyD88とNFκBの発現が亢進していた。次に、TLR9のリガンドであるCPG-ODN、或いはTLR7のリガンドであるImiquimodでマウスに感作させると、血中の糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体の産生亢進がみられ、IgA腎症の増悪を認めた。TLR9/TLR7の下流のシグナルである、MyD88とNF-κBの発現亢進も認められた。続いてCRISPR-Cas9を用いたIgA腎症モデルマウスのTLR9ノックアウト(KO)、TLR7KO、およびTLR9とTLR7の共通の下流であるMyD88KOモデルを作製し、腎症の表現系とTLR9/TLR7シグナルの活性化の関連を比較検討した。TLR7KOとTLR9KOマウスでは、糸球体のIgA, C3の沈着が軽度低下している傾向がみられた。一方で、MyD88KOマウスでは、血中の糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体の産生低下がみられた。さらに、糸球体IgA, C3の沈着が明らかに減少していた。以上のことからIgA腎症の新規治療法として、TLR9/7のシグナル伝達経路を抑制するヒドロキシクロロキン(HCQ)の効果が期待された。IgA腎症モデルでHCQによる腎症の進展抑制効果が認められた。さらに、ヒト扁桃細胞では、 HCQによる糖鎖異常IgA1、IgG-IgA免疫複合体産生が低下し、TLR9/TLR7の下流のシグナル(MyD88, NF-κB)の発現低下も確認できた。HCQはIgA腎症における粘膜免疫応答を制御する治療法として臨床応用が期待される。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件)
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