研究実績の概要 |
自己炎症性疾患の一つであるPAPA症候群は、PSTPIP1遺伝子の機能獲得型変異が、無菌性に進行性の化膿性関節炎及び、難治性の皮膚症状を引き起こす疾患である。一方、PAMI 症候群は、血清中のカルプロテクチン(CP)および亜鉛の高値を特徴とするPSTPIP1遺伝子の異なるバリアントによるPAPA症候群の重症型である。本疾患は、好中球の機能亢進が病態に関与していると推測されている。しかし、PSTPIP1変異がどのような分子メカニズムで好中球の機能異常を来すのか、また好中球異常と病態形成の機序の解明についての本質的な原因は不明な点が多い。また、これらの疾患では、治療法に対する反応は様々で、本疾患群に対する標準的な治療法は存在しない。 我々の作製したPAPA-,PAMI-iPS細胞由来好中球については、患者で報告されている表現型を再現するかどうかの検証を終えた。またPAPA-,PAMI-iPS細胞由来好中球のROS産生亢進や細胞脆弱性のみならず単球・マクロファージの多彩な炎症性シグナルの亢進と過剰なCPとの関与を明らかにした。さらに、PAMI症候群で顕著な過剰産生を認め炎症の重症化・慢性化のループの原因であることが知られているに着目し、CPをKOしたPAPA-,PAMI-iPS細胞を作製し疾患モデルを使った包括的なRNA-Seq遺伝子発現プロファイリング解析を実施し、炎症惹起機構と炎症収束機構の破綻による炎症の慢性化を引き起こす本疾患の病態形成の一旦を解明し、本疾患におけるカルプロテクチン抑制療法の可能性について評価した。
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