本研究期間において、異なる年齢層のヒト皮膚検体を酵素処理により表皮・真皮に分割し、さらにそれぞれの分画を酵素処理、flow cytometryにてT細胞を単離し、single cell RNAseq解析を行ったところ、resident memory T細胞が複数の分画から構成され、年齢層あるいは個体差により、また表皮・真皮の分布部位の違いにより、その分布が異なることが分かった。また、FABP5の発現強度と相関する細胞表面分子・転写因子に、resident memory T細胞と関わることが既報告で示されている分子が複数見つかり、FABP5の発現とこれらの分子の発現とを結ぶカスケードの候補を探索できた。さらに、in vitroで作出したresident memory T細胞様細胞において、PLA解析から、FABP5がresident memory T細胞で特徴的な転写因子の核内移行を促すこと、この転写因子活性により、さらにresident memory T細胞に特徴的な発現分子の増強が生じることが分かった。 野生型マウスとT細胞特異的FABP5欠損マウスでの検討において、FABP5欠損resident memory T細胞と野生型resident memory T細胞の比較をRNAseq解析で行ったところ、FABP5欠損resident memory T細胞で発現低下する分子が主に転写因子の範疇で同定された。したがって、T細胞特異的FABP5欠損マウスにおいてresident memory T細胞様のT細胞が構築されるもののその機能が不全である理由として、FABP5の下流で促進される転写因子を介する経路がresident memory T細胞の機能保持に重要であることが考えられた。
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