研究課題/領域番号 |
21K08300
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清原 英司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70423176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガングリオシド / 皮膚リンパ腫 / 菌状息肉症 / 皮膚腫瘍免疫 / resident memory T cell / NK cell |
研究実績の概要 |
患者皮膚組織検体から抽出した細胞をFACS解析すると、免疫療法のターゲットであるPD-1やPD-L1の発現はCD7陰性の腫瘍細胞で有意に周囲の正常T細胞よりも発現が高かった。よって皮膚リンパ腫は免疫チェックポイント阻害剤のターゲットと成りうることがわかった。 精製されたfreeのガングリオシドGD3によるPBMCならびにリンパ腫細胞への影響を検討した。当初マクロファージへの影響を考えてGD3を正常PBMCに添加したところ、CD14陽性細胞群よりも、CD14陰性細胞群で有意な細胞減少がみられた。よってGD3の影響をうける対象群をCD14陰性細胞とした。free GD3が活性化Tリンパ球のアポトーシスを誘導するとの報告があったため、PBMCへのGD3添加による細胞死を調べてみると、CD3陰性群で陽性群よりもアポトーシスが一様に誘導されていた。また、GD3の受容体としてsiglecが知られているが、その阻害剤を使用することでPBMCの細胞数の減少がみられなくなり、free GD3が特定のsiglecを介して既存の細胞死経路を利用していることが確認できた。そこでsiglecとNK細胞の関係に注目したところ、菌状息肉症の皮膚病変部において、正常皮膚と比較してその特定のsiglecはNK細胞上で保存されており、その他のsiglecは菌状息肉症で低下していた。また、組織中のCD3やCD8陽性細胞に対するNK細胞の割合は菌状息肉症で低下しており、腫瘍由来のGD3がsiglecを介してNK細胞を減少させる可能性が示唆された。 腫瘍組織内におけるNK細胞へのGD3の影響を調べるため、C57/BL6マウス並びにC.B17-SCIDマウスにそれぞれマウスとヒトリンパ腫細胞株を接種し、背部に腫瘤を作成した。精製GD3を腫瘍内投与したところ、どちらの腫瘍内でもNK細胞は有意に低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
担癌マウスにおけるGD3の影響が明らかになってきた。その他の免疫細胞の変化も解析を行うことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞株におけるGD3の過剰発現系の構築がうまくいっていない。抑制系の細胞株構築も検討し、free GD3の影響の差を検討したい。引き続き臨床データの解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体の節約に成功したことやマウスの入手を同じ部局内で対応できるケースがあったため繰り越し分が発生した。その分、他の抗体購入などに充てる予定である。
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