研究課題/領域番号 |
21K08301
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柳瀬 雄輝 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (40452586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性蕁麻疹 / 血液凝固 / 補体 / マスト細胞 / 好塩基球 |
研究実績の概要 |
慢性蕁麻疹は明らかな誘因無く、長期にわたりほぼ毎日膨疹が繰り返し出没する疾患であり、何らかの刺激を受けた皮膚マスト細胞・好塩基球から放出されるヒスタミン等が、皮膚微小血管に作用して血管透過性を亢進し、膨疹を形成すると考えられている。皮膚マスト細胞・好塩基球の活性化機序として、一部の患者ではマスト細胞・好塩基球膜上の高親和性IgE受容体やIgE抗体に対する自己抗体が認められる。また、ストレスや感染症が増悪因子となる症例もあるが、慢性蕁麻疹の発症機序は依然不明である。近年、慢性蕁麻疹の病態に血液凝固系が関与することが報告されている。近年我々は、健常人に比べ、慢性蕁麻疹患者の末梢血単球に、外因系凝固反応の開始因子となる組織因子(tissue factor: TF)が高発現していることを発見した。また、in vitroで、ヒト血管内皮細胞を慢性蕁麻疹の増悪因子であるlipopolysaccaride (LPS)、ヒスタミン、vascular endothelial grows factor (VEGF)、IL-33、tumor necrosis factor α (TNFα) 等を組み合わせて刺激すると、それぞれの単独刺激に比べ、相乗的にTF発現が上昇することを見出した。また、これらのTF発現細胞は、TFを発現するマイクロパーティクル(MP)を放出することも発見した。さらに、血管内皮細胞・単球上に高発現したTFは、局所的に外因系凝固反応を駆動し、活性化凝固因子(Xa、IIa等)を産生すること、また、Xa、IIaは血管内皮細胞上のprotease-activated receptor-1 (PAR-1)を介して、血管透過性を亢進することを突き止めた。本研究では、これまでに得られた知見を基に、血液凝固系・補体系によるマスト細胞・好塩基球活性化機序の解明についてより詳細な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに申請者は、血管内皮細胞が慢性蕁麻疹の増悪因子であるヒスタミン、VEGF、LPS、TNFなどに同時に暴露されると、相乗的にTFが発現し、凝固経路の活性化とそれに次ぐ血管透過性の亢進を引き起こす可能性を示してきた。しかし、実際の病態では、これらの増悪因子が同時に血管内皮細胞を刺激することはほとんど無く、時間差が生じていると考えられる。そこで、血管内皮細胞を刺激するタイミングをずらしてもTF相乗的発現が見られるか検討した。その結果、1段階目の刺激が入った後、10時間程度であれば、2段階目の刺激に強く反応しやすい状態が保たれている事(プライミング効果)を明らかにした。また、TF発現によって活性化した血液凝固因子は、補体成分であるC5からC5aを産生し、C5a受容体を介してマスト細胞・好塩基球を活性化することを明らかにした。さらに、慢性蕁麻疹患者の好塩基球はIgE受容体を介した刺激によって活性化しにくい状態(ノンレスポンダー)になっていることが多いことが知られている。そのため、慢性蕁麻疹患者の好塩基球は抗原―抗体反応以外の刺激によって活性化されている可能性が考えられる。そこで申請者は、健常人・慢性蕁麻疹患者の好塩基球を、IgE受容体を介した刺激とC5aによる刺激に対する応答性を評価した。その結果、IgE受容体を介した刺激に対する応答が弱い好塩基球でも、C5aに対する応答性は維持されていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は申請者が血管内皮細胞のTF抑制因子として見出したアデノシンが、血液凝固反応によって生じたC5a等による皮膚マスト細胞・好塩基球の活性化に対してどのように作用するか検討する。また、様々な阻害薬を使った薬理学的手法により、血液凝固系・補体系によって活性化されるマスト細胞・好塩基球のシグナル伝達経路を明らかにする。また、TF発現末梢血MPの役割についても検討を行う。具体的には、TF発現状況をフローサイトメトリ法などで解析し、血液凝固反応が原因となる慢性蕁麻疹の程度を示すマーカーとして利用し得るか検討する。また、TF発現MPが、血液凝固反応とその後の膨疹形成にどの様に関与しているか検討する。このような研究が成されれば、血液凝固系・補体系が関与する慢性蕁麻疹に対する新しい治療薬の開発に繋がると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度はオンライン開催の学会が多く旅費や学会参加費が減少した。2023年度は現地開催の学会が増加するため、学会参加のための旅費や学会参加費として使用する。
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