ざ瘡(にきび)の治療は国際的には30年以上大きな進展がない。ざ瘡は毛包漏斗部と脂腺開口部の角化異常と脂腺の活性化を伴う「毛包炎」で、Cutibacterium acnes の増殖は必ずしも感染症とはみなされず、自己炎症性疾患の一所見としても生じる。好中球の遊走とTヘルパー (TH) 17型リンパ球の活性化がみられ、脂質代謝や酸化ストレスとの関連も知られる。毛包の免疫恒常性、代謝と免疫の相互制御の研究は急速に進歩しているが、新機軸によるざ瘡の理解は必ずしも進んでいない。申請者らは乾癬型皮膚炎の上皮-免疫微小環境 (EIME) において上皮が慢性炎症の「回路」の中心となることを示した。一方、ざ瘡で「炎症の回路」という概念の適用はこれまでになかった。申請者は、ざ瘡が、TH17型炎症、角化異常、脂質・酸化ストレス異常の3点で乾癬に似ている可能性に着目した。本研究ではざ瘡の発症における上皮-免疫細胞間の回路を明らかにし、新規治療の創出や予防に結びつける 実験動物を用いた毛包脂腺系の病態評価について、第1に、Rhino マウスを米国ジャクソン研究所より導入した。当施設への導入に際してクリーン化を行い、現在繁殖中である。第2に、B6マウスに対する高脂肪食によるざ瘡の誘発について、脂肪酸の連続外用およびホルボールエステル (PMA)外用でも同様の病変の誘導が報告されていることから、パルミチン酸を用いて再現実験を行っているが、現時点でざ瘡様皮疹の誘導にいたっていない。逆転写定量的PCRなどによる評価についても条件の最適化を継続して行っている。
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