全身性強皮症は皮膚および肺など多臓器に線維化を生じる系統的疾患であるが、線維化の原因としての各組織へのI型・III型コラーゲン異常沈着の機序は未だ不明である。線維化は一般に不可逆的であるため早期診断が必要だが有用な血液マーカーは同定されておらず、また有効な治療法にも乏しい。一方、piRNAは最近注目されているnon-coding RNAの一つで遺伝子の発現調節に関連し、環境因子として機能しうることが示唆されている。しかし、ヒト疾患での役割はいまだに解明されておらず、皮膚疾患や膠原病では研究されていない。 本研究の目的は①piRNAの皮膚線維化への関与、②血清中濃度の診断・病勢マーカーとしての有用性、そして③piRNAによるマウス皮膚線維化の抑制効果の3点を明らかにすることである。 昨年度までに我々は正常線維芽細胞と強皮症病変部皮膚由来線維芽細胞からtotal RNAを抽出し、強皮症の病態に関わるCOL1A1、COL1A2、あるいはCOL3A1などの分子に関わる複数のpiRNA発現をQuantitative real-time PCRを用いて評価した。その結果、強皮症線維芽細胞で特異的に増加しているpiRNAを特定した。一方、PIWI発現には変化はみられなかった。そのpiRNAを正常線維芽細胞に強発現することで、コラーゲンの発現に変化を認めた。 本年度、我々は血清中piRNAの検出のための条件検討、血清サンプルの集積とマウス研究の準備を継続した。
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