研究課題/領域番号 |
21K08313
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山西 清文 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10182586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インターロイキン33 / アラーミン / 角化細胞 / アレルゲン |
研究実績の概要 |
警報因子(アラーミン)は外界からの侵襲や細胞の破壊に際して放出され、免疫反応を誘導する生体分子の総称である。IL-1ファミリーのサイトカインIL-33もアラーミンの一種で、バリア機能を担う上皮系細胞等の核内に局在し、細胞の破壊以外にもアレルギーを引き起こす物質の刺激などで細胞から遊離される。アトピー性皮膚炎(AD)の表皮ではIL-33の発現が増加しており、ADの皮膚は「アラーミンが過剰」な状態と考えられる。研究代表者らは、ヒトケラチン14(K14)をプロモーターとしてIL-33を表皮で過剰に産生する遺伝子改変マウス(IL-33Tg)を作成し、このマウスが免疫学的にADに酷似する皮膚炎を自然発症することを世界に先駆けて見いだした。表皮角化細胞の核に発現したIL-33がどのような仕組みで細胞外に遊離され、ADの病態形成に至るのか、詳細は不明である。培養ヒト角化細胞から遊離されるIL-33は極めて微量であり、培養液中のIL-33の増減を正確に定量することは困難である。そのため、角化細胞におけるIL-33の細胞外遊離機構の研究はほとんど進んでいなかった。そこで本年度は、ヒト培養角化細胞において高感度かつ効率よくIL-33の細胞外遊離を検出する実験系を作成することを目標に研究を実施した。ヒトIL-33のC末端にHiBiTタグを付加したタンパクをコードするcDNAをK14プロモーターの制御下に発現するプラスミドDNAを構築し、不死化ヒト角化細胞に導入した。ヒトIL-33HiBiTの濃度は、HiBiTと結合してルシフェラーゼ活性を示すLgBiTと基質となるフリマジンを用いた化学発光(RLU)で測定し、ピューロマイシンの選択によりヒトIL-33HiBiTタンパクを恒常的に発現する角化細胞株を樹立した。この細胞にダニ抽出液のアレルゲンを作用させたところ、用量依存性にRLUの増加が検出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮からのIL-33遊離の検出については、上記IL-33を表皮で過剰に産生するIL-33Tgマウスの耳介から採取した表皮を用いる実験系を考案した。しかし、この方法ではサンプル採取にかかる時間や組織に加わる侵襲によって、遊離するIL-33の変動がサンプル間で大きく、アレルゲン等の刺激によるIL-33の遊離を正確に評価することは困難であった。そこで、ヒト培養角化細胞を用いてIL-33の遊離をモニターする実験系の作成を行った。当初、IL-33HiBiTをコードするDNAのトランスフェクションによる一過性の発現系の作成を試みたが、トランスフェクションに伴う細胞毒性のため、遊離するIL-33HiBiTの検出には至らなかった。そのため、IL-33HiBiTを恒常的に発現するヒト培養角化細胞の樹立を実施した。初代培養ヒト角化細胞の分裂・増殖は有限であり株化は困難である。代わりに不死化ヒト角化細胞を用いることによってIL-33HiBiTの遊離を高感度かつ簡便にモニターする実験系を確立するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、株化ヒト角化細胞の樹立によって角化細胞から遊離するIL-33HiBiTを高感度で簡便に検出する実験系を確立することができた。今後は、これらの株化細胞に各種アレルゲン等を作用させて、IL-33の遊離を選択的に誘導する刺激物質の探索を実施する。同時にATPなど、他のアラーミンの遊離をモニターしながら、IL-33遊離との関連性や相互作用について検討を行う予定である。さらに、IL-33遊離のシグナル伝達系の同定、アラーミンの活性化を制御する新たな治療手段の探索へと研究を進展させる計画である。
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