研究課題
当該年度は昨年に引き続き、ヒトメラノーマ・セルラインを用いて血管新生因子および炎症性因子をin vitroで検証した。また、同時に血管新生因子とカテリサイジンCRAMP(マウスにおけるLL-37)との関連を生体内で明らかにするため、既存のB16F10メラノーマモデルを用いて、血管新生因子を網羅的に解析した。その結果、これまでに有棘細胞癌や乳房外パジェット病で報告していたLL-37によるTh17誘導のメカニズムに加えて、さらにその上流のIL-23p19の産生をLL-37がコントロールしていることが示唆された。注目すべきことにIL-23p19は腫瘍の血管新生・繊維化などの腫瘍の進行に貢献することが知られており、実際にIL-23p19の阻害が抗腫瘍効果につながることが知られている。さらに、ヒトメラノーマA375細胞に置いてLL-37はMMP-9のタンパク産生を亢進すること、ヒト単球由来のM2マクロファージにおいて、LL-37はCXCL5およびMMP-1のタンパク産生を亢進することを明らかにした。これらLL-37により産生が亢進する血管新生因子の機能を明らかにするため、ヒト内皮細胞(HDMEC細胞)を用いた3次元培養システムで検証した。その結果、LL-37により刺激したA375メラノーマ細胞培養液は、未刺激のものに比べて血管形成が亢進することが明らかになった。さらにヒトメラノーマ臨床検体において、LL-37の発現頻度がTステージに比例して増加することが示されたことから、本研究はLL-37がメラノーマ原発巣において、血管新生を亢進することにより局所浸潤を亢進するメカニズムの一部を解明した。本研究の内容は2022年12月の国際学会(Japanese Society for Investigative Dermatology)で発表し、その後、欧州英文誌Cancersに掲載された。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度は主にマウスB16F10メラノーマモデルを用いて血管新生因子とカテリサイジンCRAMP(マウスにおけるLL-37)との関連を生体内で明らかにするため、、血管新生因子を網羅的に解析した。その結果、これまでに有棘細胞癌や乳房外パジェット病で報告していたLL-37によるTh17誘導のメカニズムに加えて、さらにその上流のIL-23p19の産生をLL-37がコントロールしていることが明らかとなった。注目すべきことにIL-23p19は腫瘍の血管新生・繊維化などの腫瘍の進行に貢献することが知られており、実際にIL-23p19の阻害が抗腫瘍効果につながることが知られている。さらに、ヒトメラノーマA375細胞に置いてLL-37はMMP-9のタンパク産生を亢進すること、ヒト単球由来のM2マクロファージにおいて、LL-37はCXCL5およびMMP-1のタンパク産生を亢進することを明らかにした。これら血管新生因子の機能を、ヒト内皮細胞(HDMEC細胞)を用いた3次元培養システムで検証した。その結果、LL-37により刺激したA375メラノーマ細胞培養液は、未刺激のものに比べて血管形成が亢進することが明らかになった。さらにヒトメラノーマ臨床検体において、LL-37の発現頻度がTステージに比例して増加することが示されたことから、本研究はLL-37がメラノーマ原発巣において、血管新生を亢進することにより局所浸潤を亢進するメカニズムの一部を解明した。本研究の内容は2022年12月の国際学会(Japanese Society for Investigative Dermatology)で発表し、その後、欧州英文誌Cancersに掲載された。
2022年度に、当該研究により、血管新生因子であるMMP-9及びIL-23p19が実際にヒト内皮細胞(HDMEC細胞)を用いた3次元培養システムで証明した。これらの血管新生因子がメラノーマにおいて腫瘍の進展に関与することをすでに欧州科学雑誌に報告しているため、2023年度は更に、これらの因子がメラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍においても同様に局所浸潤・遠隔転移に関与するか検証することにより、LL-37/ MMP-9・IL-23p19シグナルが、より多くの癌腫に共通の因子であるか否かを検討する。具体的には皮膚血管肉腫、皮膚T細胞性リンパ腫、皮膚有棘細胞癌など進行期に対する標準治療が限られているこれら癌腫において、MMP-9、IL-23p19を中心に臨床検体を免疫染色法を用いて検証する。更にヒト血管肉腫細胞株ISO-HAS-B、ヒト皮膚T細胞性リンパ腫細胞株HUT-78、ヒト有棘細胞癌株A431をLL-37で刺激し、上記血管新生因子の発現・産生が更新されるか否かを検討する。加えて、これら血管新生因子の機能を確認するため、HUVEC内皮細胞三次元培養システムを用いて検証する。以上を明らかにすることにより、2022年度にメラノーマで確認されていたLL-37の血管新生を介した腫瘍進行への影響を皮膚悪性腫瘍全般での共通因子であるかを検証することが可能となり、当初メラノーマでの開発を予定していたLL-37をターゲットとした新規治療法の開発を皮膚悪性腫瘍全般に拡大することが可能となる。
当該年度の研究は、主に前年度までの血管新生因子のin vitroの研究とELISAによるタンパク同定が中心であり、前年度の消耗品を継続して使用していたため、当初の予定より消耗品代を節約できた。また、当初予定していた旅費は新型コロナ流行のためWEB開催であったこと、招待学会が当初より多かったため、旅費、参加費が概算した額を要さなかった。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
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