研究課題
劣性栄養障害型表皮水疱症は、皮膚に繰り返し水疱が形成される遺伝性の難病であり、現在のところ根治的な治療法は存在しない。本疾患は、表皮と真皮をつなぐ皮膚基底膜構成因子であるVII型コラーゲンをコードするCOL7A1遺伝子の変異により発症する。患者は生涯にわたって全身熱傷様症状に苦しむ。本疾患では患者ごとに病態に大きな違いがあることが知られる。この病態に対する具体的な治療アプローチの開発が求められている中、本研究では遺伝子型と表現型の相関を解明し、病態に対する理解をさらに深めることを目的とした。具体的には、劣性栄養障害型表皮水疱症の患者由来遺伝子変異を有するモデルマウスを迅速マウスゲノム編集技術を用いて複数作製し、これらの遺伝子型と病態(表現型)を対応付ける研究を行った。加えて、シングルセル技術を用いた詳細な解析により、患者由来の遺伝子変異が細胞レベルでどのような影響を及ぼしているかを評価した。昨年度までに、当初目的としたモデルマウスを作出は終えた。今年度は、患者型変異モデルマウスを効率的に交配するための条件も検討した。また昨年度までにデータ取得を終えていたシングルセルRNA-seq/ATAC-seqデータの統合的な解析を進め、COL7A1遺伝子変異が皮膚の恒常性を破壊するメカニズムに迫ることができた。これらの成果は、遺伝子診断に基づく病態予測の精度を向上させ、将来的には劣性栄養障害型表皮水疱症の治療法開発への道を開くものである。本研究が提供する基盤情報は、この難病の理解を深めるだけでなく、関連する他の皮膚疾患の研究にも寄与する可能性がある。
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