研究課題/領域番号 |
21K08325
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
村田 暁彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (90624221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組織常在性記憶T細胞 / マクロファージ / 接触性皮膚炎 / 遅延型過敏症 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、BALB/cマウスのアレルギー性皮膚炎モデルを用いて、炎症を経験し治癒した皮膚には記憶ヘルパーT細胞が1年以上留まり続け、局所的にアレルゲンへの感受性を高めることを見出してきた。そこで本年度、記憶ヘルパーT細胞の皮膚局所での生存維持機構を解明するために、種々の遺伝子改変マウスが整備されているC57BL/6マウスでの皮膚炎モデルの確立に取り組んだ。 これまで通り、アレルゲンとなるトリニトロクロロベンゼンの塗布による接触過敏症(かぶれ)を試したところ、C57BL/6はBALB/cマウスとは異なり、炎症反応が非常に弱く、記憶ヘルパーT細胞が皮膚局所に形成されないことが判明した。種々のアレルゲンをスクリーニングしたところ、オキサゾロンの塗布により強い皮膚炎と皮膚記憶ヘルパーT細胞を誘導出来ることが分かった。 さらに抗原特異的な記憶ヘルパーT細胞を可視化するために、特定のペプチド(LCMV抗原)に特異的に反応するヘルパーT細胞のみを体内に持つ遺伝子改変マウス(SMARTAマウス)を用いた遅延型過敏症の系を構築した。SMARTAマウス(Thy1.1+/Thy1.2+)から単離したヘルパーT細胞を野生型マウス(Thy1.2+)に移植後にLCMV抗原をアジュバントと共に皮下に感作した。1週間後、耳介にLCMV抗原を投与することで耳介に強い遅延型過敏症を誘導できた。炎症の治癒後、移植したSMARTAマウス由来の記憶ヘルパーT細胞(Thy1.1+)が皮膚に残存することを確認した。 どちらの皮膚炎の系においても、炎症終息後の皮膚切片の解析により、皮膚局所に留まる記憶ヘルパーT細胞の一部が真皮のマクロファージと接着し存在することを見出した。よって、マクロファージが記憶ヘルパーT細胞の生存に必要なニッチとして機能する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験系の構築に時間がかかってしまった。 これまでBALB/cマウスを用いて確立したトリニトロクロロベンゼンによる接触過敏症の系がC57BL/6マウスでは機能しないことが判明し、適したアレルゲンを探し出すのに時間がかかった。 また、切片を作成するためのクライオスタットの機種が変更になったことで、これまで上手くいっていた皮膚切片の作成方法がなぜか全く通用しなくなり、切片が作成できなくなった。新しい手法を確立するために相当な時間を費やしてしまったが、最終的には特殊なフィルムを貼付し切片を作成する「川本法」を導入し、一応の解決に至った。 加えて、SMARTAマウスのT細胞移植による遅延型過敏症の系の構築において、当初Thy1.1ホモのマウスをドナーに用いていたが、炎症終息後にドナー由来の皮膚記憶ヘルパーT細胞がほとんど形成されず、体内の他の部位にも残存していなかった。最終的にThy1.1+/Thy1.2+ヘテロのマウスをドナーに用いたところ、皮膚記憶ヘルパーT細胞を誘導できたことから、おそらく当研究室で保有しているThy1.1ホモのSMARTAマウス由来のドナーT細胞は野生型のレシピエントの体内で拒絶され消失してしまうと考えられた。この事実に気づくのにも時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
SMARTAマウスのT細胞移植による遅延型過敏症の系を主に用いて、マクロファージを含め抗原特異的な皮膚記憶ヘルパーT細胞(Thy1.1+)と近接して存在し生存ニッチとして機能する可能性がある細胞種を特定する。それらの細胞を除去したり、発現する分子を阻害したときに皮膚記憶ヘルパーT細胞が消失するものを探索することで、ニッチとなる細胞種や必要なシグナルを特定する。
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