研究実績の概要 |
本研究は皮膚常在性記憶ヘルパーT細胞の生存機構を解明することを目的とする。生存ニッチを特定するため、接触過敏症を経験した皮膚に形成され長期間維持される常在性記憶ヘルパーT細胞が皮膚内で接して存在する細胞群に関して、皮膚切片の免疫染色を用いてさらなる検討を行った。炎症治癒後40週にわたり、約90%の皮膚常在性記憶ヘルパーT細胞が血液細胞(CD45+)と接して維持されていた。個別の細胞種としては60%以上がマクロファージ(CD11b+, F4/80+, Folr2+, MerTK+, CD68+)に、15%弱が単球または血管内皮細胞(Ly-6C+, CD31+)に、15%前後が樹状細胞(CD11c+)に、数%がマスト細胞(Kit+)に接して維持されていた。接着するマクロファージは、MHC class II陽性が陰性のものより多かった。炎症を経験した皮膚では常在性記憶ヘルパーT細胞だけでなく、これらニッチとなりうる細胞群も増加し維持されていた。 接触過敏症の系では皮膚常在性記憶ヘルパーT細胞のうち、どれが真に抗原特異的なT細胞か特定できないという問題があった。そこで、ある抗原に特異的なT細胞受容体の遺伝子を人工的に発現させたT細胞を野生型マウスに移植し、特異的な抗原で免疫して遅延型過敏症を生じさせる系を構築した。この系においても治癒した皮膚に、移植したT細胞由来の抗原特異的常在性記憶ヘルパーT細胞が形成され、その60%が増加したマクロファージに接着して存在することが確認された。 さらにこの系を用い、貪食細胞を殺すクロドロン酸リポソームを皮内投与すると、局所的にほとんどの皮膚マクロファージを除去することができた。このとき同時に常在性記憶ヘルパーT細胞も大部分が除去されたことから、マクロファージを含む貪食細胞が常在性記憶ヘルパーT細胞の主な生存ニッチとして機能することが示された。
|