研究実績の概要 |
アレルギー性皮膚疾患の再発に関わる「局所的な長期免疫記憶」を担うCD4+常在性記憶ヘルパーT細胞(CD4+ TRM)の生存機構について前年度までに、皮膚CD4+ TRMの70%がマクロファージマーカー(CD11b, F4/80, CD68, MerTK)を発現する細胞と接して維持されることを見出してきた。 本年度、CD4+ TRMが実際に接触して維持されるミエロイド細胞系譜の特定を行った。真皮ミエロイド細胞(単球、単球由来樹状細胞、2型古典的樹状細胞、マクロファージ)の遺伝子発現解析により上記マクロファージマーカーが広く発現していたことから、これらのマーカー分子では組織切片上で細胞系譜を特定できないことが判明した。そこで遺伝子発現データベースを解析し、皮膚マクロファージ分画にのみ発現する分子としてFolr2を特定した。フローサイトメトリー解析で全皮膚細胞中のFolr2+細胞は95%以上がマクロファージ分画であることが確認され、Folr2染色のみで組織切片中のマクロファージを同定できることが分かった。その結果、1) CD4+ TRMの70%がFolr2+マクロファージと接したまま維持されること、2) Folr2+細胞はMHCII陽性と陰性に分かれ、各々に40%前後ずつのCD4+ TRMが接すること、3) Folr2+MHCII+マクロファージ(及び単球由来樹状細胞)は炎症終息後の皮膚で増加し一定期間維持されること、4) CSF1R阻害抗体の長期腹腔投与により、Folr2+マクロファージの大部分を炎症を生じさせることなく除去できることを明らかにした。 以上より、皮膚CD4+ TRMの生存をFolr2+マクロファージが接触を介して長期間支持し続ける可能性が示唆された。今後この分子機構を特定することで、CD4+ TRMを除去し皮膚疾患の再発を防止することが可能になると考えられる。
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