研究課題/領域番号 |
21K08328
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐野 栄紀 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (80273621)
|
研究分担者 |
中島 喜美子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (20403892)
山本 真有子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (20423478)
佐野 ほづみ 高知大学, 医学部附属病院, 医員 (70899319)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 乾癬 / メラノサイト / 白斑 |
研究実績の概要 |
慢性の炎症性角化症である乾癬においてはしばしば脱色素斑や、ときには白斑を合併することが知られている。乾癬の治療に応じて脱色素斑は軽減することが多いが、その後白斑として残存することもある。しかし、この病的メカニズムの詳細は現在まで明らかにされていない。本研究においては、乾癬に特徴的な過増殖、分化の異常といった表皮角化細胞によって、メラノサイト(MC)の異常が誘導されるとの作業仮説のもとに、病理組織、電顕所見、in vitro 細胞混合培養系そしてマウスモデルを用いた解析によって、角化細胞-MC間の相互作用を明らかにする。さらに、この相互作用の解明により、①乾癬病態におけるMCが積極的に関与する可能性(乾癬皮疹部のエフェクターT細胞がMC由来の抗原認識を行うという報告がある)、②乾癬の治療法である紫外線照射において、MCが果たす役割、③(乾癬とは独立した)白斑の病態メカニズムも解明できる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乾癬の治癒部位に白斑、脱色素斑を呈する症例を時に経験する。Fontana-Masson染色を用いて、乾癬病変部、非病変部におけるメラニンの分布を観察したところ、非病変部においては、主に基底層にメラニン含有細胞が観察されたが、乾癬病変部ではほとんどみられなかった。次に、乾癬病変部の基底細胞内のメラノソームを電顕で観察したところ、非病変部では、基底細胞内に多くのメラノソームが観察されたが、乾癬病変部の基底細胞内のメラノソームの数は減少していた。次に、Melan A染色を用いてメラノサイトを観察したところ、乾癬病変部のメラノサイトの数は、非病変部と比較して、約2倍に増加していた。また、電顕で、メラノサイトを観察したところ、非病変部のメラノサイトではメラノソームを多数認めたが、一薄切上の乾癬病変部のメラノサイトではメラノソーム数は減少する傾向にあった。次に非病変部と乾癬病変部内のメラノサイト内のメラノソームのstageⅡ、Ⅲ、Ⅳを観察した。非病変部と乾癬病変部では、stageⅡ、Ⅲのメラノソーム数は有意差を認めなかったが、stage Ⅳのメラノソームは減少していることが明らかになった。これらの結果より、乾癬の表皮細胞が過増殖する際に、メラノサイトも過増殖し、未熟なメラノサイトである可能性、あるいは、乾癬の表皮細胞が過増殖するため、メラノサイトからのメラニンを効率よく手渡せないメラニン色素の“dilution effect”を生じている可能性を考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
[1] 乾癬病変のMC評価 (2022):免疫組織染色によるMCのE-cadherinなど細胞接着分子およびADAMTS5L発現量の評価など。 [2] MC 培養細胞を用いたin vitro解析 (2022-2023):①乾癬病変部および対照表皮より分離したMC培養細胞での遺伝子発現プロファイリング、②KCあるいは炎症細胞由来サイトカインその他乾癬関連液性因子(TNF, IL-1, IFN-γ, IL-17A, LL-37, b-defensin2等)に対するMCの遺伝子発現(MITF, tyrosinaseなどmelanogenesis関連分子およびADAMTS5L、E-cadherinなど接着分子)の検討、③anti-psoriatic刺激(紫外線、vitamin D3など)によるMC遺伝子発現の変化、④reconstructed pigmented human epidermis (RHPE)を構築、乾癬関連因子で刺激後、MCの形態、分子・遺伝子発現を検討。⑤刺激後MCをstimulatorとして患者T細胞混合培養し、その増殖刺激能、granzyme, perforin発現などを検討する。 [3]マウスモデルの樹立(2022-2023) :①乾癬モデルマウスK5.Stat3C transgenicをヒト型表皮MC発現モデルK14.SCF(stem cell factor) transgenic(連携研究者である山形大、鈴木民夫教授より分与予定)を交配し、表皮にMCが存在する乾癬病変モデルを樹立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による診療業務の増加で、細胞培養、動物実験が遅れている。そのため次年度は試薬、培地、動物飼育費などに予算を充てる予定である。
|