我々は乾癬患者からテープストリッピング法を用いて角質細胞を採取し、超音波破砕法を用いて蛋白を抽出し、ELISA法にてS100A8/A9を定量する方法を確立し乾癬の病勢を客観的に判断できるモニタリングバイオマーカーとして有力であることを示唆してきた。今回の研究では多数の乾癬患者に対し、経時的に角質細胞S100A8/A9を測定し、治療変更に伴う病勢変化とS100A8/A9変化の時間的関係性、治療の種類による変化の違い、皮疹部位による変化の違いを明らかにすることにより、本方法の病勢モニタリングとしての鋭敏度を明らかにすること、治療反応性との比較検討により治療反応性予測マーカーとして機能できるか検討した。 当科乾癬外来通院中の患者7名において、3つの異なる部位から角層を採取し、同一症例で経時的に3回S100A8/A9の定量を行うことで、S100A8/A9と部位別PASIスコアの関連性について前向きに比較検討した。その結果、S100A8/A9は治療薬によらず経時的に病勢と平行に推移した。このことからS100A8/A9の変化は治療薬の影響を直接受けた結果ではなく、純粋に乾癬の病勢を鋭敏に反映した結果であることが結論され、S100A8/A9は治療反応性の予測マーカーとはならないことが推察された。また、乾癬患者の身体部位別にS100A8/A9と同部位の主観的病勢スコアであるmPASIとの相関を検討したところ、上肢がr=0.822、頭部がr=0.656、体幹がr=0.491、下肢がr=0.321と全身PASIスコアよりも相関が強いことが明らかになった。以上より、S100A8/A9は局所の皮疹の病勢を鋭敏に反映しているものであり、乾癬の局所療法の治療評価に於いて客観的な病勢バイオマーカーとなり得ることが示された。
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