これまで我々が構築した皮膚腫瘍の臨床画像AI診断システムは14種類21カテゴリの良悪性含む皮膚腫瘍を高い感度と特異度で判別でき,スクリーニングツールとしては十分な成績であるが,悪性を良性と間違える偽陰性が5%に生じていることとクラスごとの正答率にはばらつきがあることが問題であった.正答例と誤答例におけるどのような因子が診断に影響しているかを解析した.その手法としては入力画像にヒートマップをのせるGradCamを使用して検討したところ,当初はヒートマップにおいて腫瘍中心部に注目していない場合に正答率が下がると考えていたが,興味深いことに正答例でも誤答例でもヒートマップの分布にあまり違いが見られなかった.逆の味方をすると,ヒートマップで腫瘍部分に注目していなくとも正答してしまっている画像もかなり含まれていることを示している. そこで画像の中央に着目するように設定して学習をさせてみたところ,これも興味深いことに全体を用いた場合と比べて正答率が低下することが分かった.これは先のGradCamによる結果と附合するものであり,腫瘍の判定において中央部の腫瘍部分だけでなくその周囲の情報も判定に用いられていると言うことになる. このほかに,畳み込みニューラルネットも異なる種類を検討したが,実際のところ最も性能が高かったのはVGG-16と呼ばれる比較的古く,しかも構造が単純なCNNであった.これは学習に使用するが増数が1万程度であるため,転移学習としてもあまり複雑なCNNは不向きである可能性がある. 病理組織との関連を調べるために病理標本のWSIの作成にも取り組んでいたが,研究途中に使用していた深層学習用のマシンが起動しなくなり,上記研究および病理関連のデータが取り出せなくなるトラブルがあった.急遽,新しい深層学習用のGPUを搭載したマシンを調達してデータ復旧を行っている最中である.
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