研究課題
温度感受性Transient Receptor Potential (TRP)チャネルは、温度だけではなく様々な化学的・物理的刺激を感受するセンサーとして生体機能に関わっている。TRPV4は皮膚において、表皮細胞や線維芽細胞、感覚神経終末、免疫細胞に発現し、皮膚バリア機能の制御だけではなく、皮膚の痒み、免疫細胞の制御にも関与しているため、皮膚における炎症疾患の病態や制御にも寄与していると推測される。今回、我々は、皮膚炎症性疾患である尋常性乾癬とアトピー性皮膚炎のマウスモデルを用いて、TRPV4の病態における役割と制御機構について解明し、治療への応用を目指すことを目的とした。TRPV4遺伝子欠損マウスと野生型マウス用いて、イミキモド外用による乾癬様皮疹について比較検討した。我々は、人の尋常性乾癬患者の病変部皮膚の表皮細胞でTRPV4の発現が亢進することを明らかにした。TRPV4遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して乾癬様皮疹が改善することを見出した。また、病理学的、免疫学的検討によって、病変部における炎症細胞浸潤や炎症性サイトカイン(IL-17, IL-23など)、神経ペプチドであるCGRPやサブスタンスP、そしてATP産生が低下することも明らかにし、乾癬様皮疹の病態におけるTRPV4の役割を解明した。表皮細胞を用いたin vitroの研究によって、TRPV4が表皮細胞の細胞増殖やATP産生の制御に関わることも明らかにした。TRPV4アンタゴニストの投与によって皮疹が改善することも見出し、今後の治療法の開発が期待できる。我々はこの成果を、J Invest Dermatol. 2023;143(12):2356-2365.e5. doi: 10.1016/j.jid.2023.05.009.に論文報告した。
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J Invest Dermatol.
巻: 143 ページ: 2356-2365
10.1016/j.jid.2023.05.009.