研究課題/領域番号 |
21K08343
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
濱口 儒人 金沢大学, 医学系, 准教授 (60420329)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 皮膚筋炎 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
膠原病患者において疾患特異的自己抗体は特徴的な臨床像と関連しているため、疾患特異的自己抗体を同定することは、治療法の選択や合併症および予後の予測に有用である。特に全身性強皮症と多発性筋炎/皮膚筋炎では複数の疾患特異的自己抗体が報告されている。しかし、簡便に測定できる酵素免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)が開発されている全身性強皮症および筋炎関連自己抗体は限定的であるため、ELISA検査試薬が開発されていない疾患特異的自己抗体の臨床的特徴は十分に明らかになっていない。免疫沈降法は全身性強皮症および筋炎関連自己抗体を同定する信頼できる検査法であるが、アイソトープを用いるなど煩雑な手技を要するため、一般的な検査手技ではない。したがって、ELISA検査試薬が開発されていない疾患特異的自己抗体の同定について、簡便な測定法の開発が必要である。本研究では、全身性強皮症および筋炎関連自己抗体の血清中に存在する自己抗体の同定について、免疫沈降法-ウエスタンブロット法の有用性を検討することを目的としている。本年度は、筋炎特異的自己抗体である抗SAE抗体の同定について検討した。抗SAE抗体を検出するELISA検査試薬はないが、免疫沈降法-ウエスタンブロット法で抗SAE抗体を同定することが可能であった。また、抗SAE抗体が陽性であった症例について、これまで報告されている抗SAE抗体の臨床的特徴に基づいて診療を行い、合併症の予測や治療法の選択に有用であった。したがって、免疫沈降法-ウエスタンブロット法は抗SAE抗体の同定に有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともとの計画では、筋炎特異的自己抗体のうち、抗TIF1γ抗体、抗Mi-2抗体、抗NXP-2抗体、抗Ku抗体、抗SAE抗体を免疫沈降法-ウエスタンブロット法で同定することを目的とした。令和3年度は比較的頻度の高い抗NXP-2抗体を中心に検討し、抗NXP-2抗体の同定について免疫沈降法-ウエスタンブロット法が有用であることを明らかにした。令和4年度は抗SAE抗体について検討し、複数の抗SAE抗体抗体陽性患者を同定した。これらの患者では、これまでに報告されている抗SAE抗体の臨床的特徴に基づいて診療し、悪性腫瘍の検索や間質性肺疾患の精査を行った。その結果、2例の抗SAE抗体陽性例で悪性腫瘍を合併していることが判明し、速やかな治療につながった。また、抗SAE抗体陽性患者の筋炎は難治性のことがあり、重度の嚥下障害を合併することがあるため、初期から経口ステロイド薬の大量投与を行ったところ良好な経過を得ることが出来た。間質性肺疾患についても1例で合併がみられた。免疫沈降法-ウエスタンブロット法による抗SAE抗体の同定の成果は臨床に還元されており、臨床上重要な知見と考えられる。全体として研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、これまで検討した抗NXP-2抗体、抗SAE抗体についてさらに症例を増やすとともに、抗Ku抗体や抗TIF1γ抗体など自己抗体についても検討を行う。また、臨床的特徴についても検討することを予定している。これらの検討により、筋炎特異的自己抗体の臨床的特徴が明らかになることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度では前年度に引き続き免疫沈降法-ウエスタンブロット法を用いた実験を予定しており、研究費が必要なため次年度使用額が生じた。
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