代表的な膠原病疾患である全身性強皮症および筋炎では疾患特異的自己抗体が特徴的な臨床像と関連している。したがって、膠原病患者において疾患特異的自己抗体を同定することは合併症や予後の予測に有用である。疾患特異的自己抗体を簡便に測定する検査法として酵素免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)があるが、全身性強皮症および筋炎関連自己抗体を同定するELISA検査試薬は限られており、ELISA検査試薬が開発されていない疾患特異的自己抗体の臨床的特徴は十分に明らかにされていない。免疫沈降法はELISA検査試薬が開発されていない疾患関連自己抗体を同定できる検査法であるが、アイソトープを用いるなど煩雑な手技と経験が必要である。以上より、ELISA検査試薬が開発されていない疾患特異的自己抗体の同定について簡便な測定法の開発が求められている。本研究では、全身性強皮症および筋炎関連自己抗体の同定について、免疫沈降法-ウエスタンブロット法の有用性を検討することを目的としている。本年度は、全身性強皮症-筋炎重複症候群で検出される抗Ku抗体について検討したところ、免疫沈降法-ウエスタンブロット法で抗Ku抗体を同定することが可能であった。また、抗TIF1γ抗体のELISA検査試薬でindexがカットオフ値前後の症例について真の陽性か疑陽性かについても検討した。さらに、令和3年度で検討した筋炎特異的自己抗体である抗NXP-2抗体、令和4年度で検討した抗SAE抗体について症例数を増やして検討した。これらの検討を通して、抗NXP-2抗体、抗SAE抗体、抗Ku抗体を同定することでは合併症の予測や治療法の選択に有用であった。したがって、免疫沈降法-ウエスタンブロット法はELISA検査試薬の開発されていない筋炎関連自己抗体の同定に有用であると考えられた。
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