研究課題
全身性強皮症は皮膚や諸臓器の線維化、毛細血管障害、自己免疫を主徴とする全身性自己免疫疾患である。全身性強皮症患者の約90%に疾患特異抗体が認められ、これらの強皮症特異抗体は臨床症状とも強い関連をを示すことから病態への何らかの関与が推測されてきた。しかしこれらの自己抗体は全て核内蛋白に対する自己抗体であることから、その機能については不明な点が多かった。一方、全身性強皮症に対する治療法は今まで限られていたが、最近抗CD20抗体の有効性が確認され治療にも使われている。このことから強皮症でのB細胞の役割の重要性が再確認されている。私たちは強皮症患者の血清中に新規の細胞表面分子を認識する自己抗体が存在する事を見出した。今回全身性強皮症患者血液から、それらのモノクロナール抗体を約20種類樹立することに成功した。この抗体は強皮症の重症度とも関連する可能性がある。さらにこの自己抗体は免疫組織染色やprimaryの培養細胞の染色等から、線維芽細胞や血管内皮細胞に反応することが判った。これらのモノクロナール抗体の自己抗原への反応は全身性強皮症患者血清中の自己抗体と競合することから、全身性強皮症患者血清中の本抗体を定量することにも応用できる事が判明した。本抗体が全身性強皮症の重症度とも関連する可能性があることから、本抗体が疾患の重症度のマーカーになる可能性がある。現在これらのモノクロナール抗体の線維芽細胞や血管内皮細胞への働きを解析している。
2: おおむね順調に進展している
今回全身性強皮症の新規の自己抗体を見出し、全身性強皮症患者血液からそれらのモノクロナール抗体を約20種類樹立することに成功した。これらのモノクロナール抗体は実際自己抗原を認識し、強皮症に関連する種々の細胞に反応を認めたことから、今後の機能解析にも非常に有用と考えられた。
今回樹立した全身性強皮症患者で認められる新規のモノクロナール抗体の線維芽細胞や血管内皮細胞の機能への影響を解析する。また、マウスに投与することでin vivoでの機能解析を行う予定である。
今年度は遺伝子解析に学内の無料システムを用い、試薬も既存のものを使用し最小限で済んだため次年度に研究費を繰り越す事ができた。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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