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2023 年度 実施状況報告書

円形脱毛症の上皮-免疫微小環境(EIME)と免疫特権の破たんのループの伝播

研究課題

研究課題/領域番号 21K08348
研究機関久留米大学

研究代表者

加来 洋  久留米大学, 医学部, 助教 (00769862)

研究分担者 大日 輝記  香川大学, 医学部, 教授 (20423543)
研究期間 (年度) 2022-11-15 – 2025-03-31
キーワード円形脱毛症
研究実績の概要

円形脱毛症の毛包上皮では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球のリガンドであるクラスI分子や、NK細胞のリガンドである各種のNKG2Dリガンドの発現が促進し「免疫特権 (immune privilege)」が破たんしていることが報告されている。また、毛球部に浸潤するTリンパ球は、インターフェロンγ (IFN-γ)を産生するCD8+ NKG2D+リンパ球であることが報告されている。さらに、IFN-γは毛包上皮のクラスI分子やNKG2Dリガンドの発現を促進させ、毛包が産生するインターロイキン(IL)-15はリンパ球を活性化させる。したがって、毛包とリンパ球の間に、悪循環の「ループ」が成立することで、免疫特権の破たんが伝播し、「円形の」脱毛にいたると考えられる。 ところで、毛包上皮が、何の引き金によって、どのような細胞内シグナルを介して、クラスI分子や各種のNKG2Dリガンドの発現が促進して免疫寛容の破たんにいたるのか、CD8+ NKG2D+ リンパ球はどのように毛球部に遊走し、どの細胞内シグナル経路を介して活性化してループが成立し、どう伝播して円形の脱毛が生じるのかは、ほとんど明らかにされていない。
本年度は、円形脱毛症、および対照として瘢痕性脱毛、健常頭皮の臨床病理組織検体を用いてOpal蛍光多重染色を行い、毛包上皮におけるNKG2Dリガンドの発現にかかる上流・下流制御候補分子の発現レベルを評価した。これらの染色性によって症例のグループ分けを試みた。さらに、NKG2Dリガンドに対する特異抗体やNKG2D-Igを用いた免疫染色も行った。ケラチン14およびPARP1のOpal多重染色により、細胞内分子PARP1は健常ヒト毛球部の毛包上皮に強発現すること、円形脱毛症の一部の患者の病変部の毛包上皮で発現が低下することを見出した。本研究の観察結果、およびこれまでに知られた機能より、毛包上皮におけるPARP1の発現低下が免疫特権の低下に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請者の短期留学と所属の変更があり、新たな所属への異動、居住地変更による環境変化のため研究エフォートの低下があったため。

今後の研究の推進方策

今後の研究展開として、PARP1の発現が円形脱毛症の病態において他の細胞やシグナル伝達経路とどのように相互作用しているかを明らかにするため、共染色や共沈殿実験を行っていく予定である。また、PARP1の機能的役割を解析するため、遺伝子ノックダウンやオーバーエクスプレッションを行った細胞株を用いた実験も計画している。これらの取り組みにより、PARP1を標的とした円形脱毛症治療法の開発に向けた基盤を築くことができると考える。さらに、患者の治療応答や予後とPARP1発現の関連性を評価するため、より多くの症例を対象とした研究を行っていく予定である。これにより、PARP1発現の検出が円形脱毛症の診断や治療選択に役立つバイオマーカーとしての可能性も評価できる可能性がある。
本研究プロジェクトは、科研費の支援により円形脱毛症の病態解明と効果的な治療法開発に向けた重要な一歩を踏み出すことができました。今後も継続的な研究を行い、患者のQOL向上に寄与する新たな治療法の開発を目指す。

次年度使用額が生じた理由

申請者の短期留学と所属の変更があり、新たな所属への異動、居住地変更による環境変化のため研究エフォートの低下があったため。翌年度分のものについてはPARP1発現の定量化を行い、その結果を円形脱毛症の病態や治療応答との関連性を解析することで、PARP1が円形脱毛症の病態にどのように関与しているか、また、治療標的としての可能性を評価していく予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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