遺伝子改変iPS細胞由来マクロファージ(iPS-MP)によって腫瘍微小環境を抗腫瘍状態にし、免疫チェックポイント阻害薬無効なメラノーマを治療することが本研究の目的であった。最終年度では、ルシフェラーぜを用いたin vivoイメージング技術を用いた腹膜播種モデルにおいて、抗PD-L1抗体がIsotype抗体に対してある程度有効ではあるが、完全には腫瘍を拒絶できない、まさに臨床の状況を模倣するマウスモデルを用いて実験を行った。抗PD-L1抗体の単独投与でも治療効果が十分でない条件において、抗PD-L1抗体とIFN-β遺伝子を導入したiPS-MPの併用療法によって、有意に治療効果が増強するデータを得た。これについては、複数回実験を重ね、再現性を確認した。また、その同様の4群すなわち、抗PD-L1抗体単剤、iPS-MP-IFN-β単独、抗PD-L1抗体とiPS-MP-IFN-βの併用、コントロール群において、同様の腫瘍の播種と治療を行い、コントロール群マウスが死亡する直前の状態でマウスをsacrificeし、腫瘍を取り出して、浸潤リンパ球の解析を行った。解析方法はフローサイトや免疫染色を用いた。結果として併用群においてTregが減少しているデータを得た。また、これまでは上記のように、腹膜播種モデルの実験を行ってきたが、メラノーマの皮膚転移を想定して、皮下接種モデルでの検討も行った。マウス皮下にモデル抗原OVAを発現するマウスメラノーマを接種し、生着した腫瘍が直径1cmになったところで、iPS-MP-IFN-βで治療する実験を行った。この際、IFN-β遺伝子導入の有無を比較することで、腫瘍微小環境にあたえる影響を検討した。実験はまだすべては終了していないが、論文の幹となるデータはとれており、引き続きこの結果を確かなものにするための実験を続ける予定である。
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