研究課題/領域番号 |
21K08353
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
加藤 則人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30244578)
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研究分担者 |
浅井 純 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50438222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | γδT細胞 / 乳房外パジェット病 |
研究実績の概要 |
まず、末梢血単核球から分離培養できるγδT細胞(Vδ2Vγ9T細胞)の割合を検討した。末梢血より単核球を分離し14日間培養したのちに、フローサイトメトリーを用いてVγ9陽性CD3陽性細胞を確認したところ、4から5%程度がVδ2Vγ9T細胞であった。健常ヒトから採取した末梢血単核球中にはVδ2Vγ9T細胞は末梢T細胞の10%未満しか含まれていないことが確認できたため、Vδ2Vγ9T細胞がリン酸化抗原によって活性化し、増殖する性質を利用し、ゾレドロネートによる刺激を加えて培養したところ、14日後には培養単核球中の90%以上がVγ9陽性CD3陽性のVδ2Vγ9T細胞へと分化、増殖した。 引き続いて、実験に用いるVδ2Vγ9T細胞の増殖についての至適条件を検討するため、培養期間を変えてVγ9陽性CD3陽性細胞の割合を確認したところ、11日から14日にかけて90%の細胞がVγ9陽性CD3陽性であったのに対し、28日目では90%を下回るようになり、顕微鏡下の観察においても死細胞が増加していることが確認された。以上より、in vitroで培養、増殖させたVδ2Vγ9T細胞は11日から14日の間に実験に用いることが最適であると結論づけた。 さらに、ヒト末梢血由来Vδ2Vγ9T細胞の乳房外パジェット病に対する抗腫瘍効果を検討するため、乳房外パジェット病の腫瘍組織より分離、培養したCTOS (Cancer tissue-originated spheroid)を用いた基礎実験を行った。CTOSにin vitroで増殖させたVδ2Vγ9T細胞を共培養させ、CTOSの数、形態、大きさの変化を解析したところ、対照群と比較してVδ2Vγ9T細胞共培養群においてCTOSの大きさ、形、数に優位な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vδ2Vγ9T細胞がリン酸化抗原によって活性化して増殖する性質を利用し、ヒトの末梢血単核球をゾレドロネートによる刺激を加えて培養することで、14日後には培養単核球中の90%以上がVγ9陽性CD3陽性のVδ2Vγ9T細胞を得ることができた。また、その生存率の観察から、増殖させたVδ2Vγ9T細胞は11日から14日の間に実験に用いるのが最適であることが分かった。これらの事実は、今後Vδ2Vγ9T細胞を乳房外Paget病の治療に用いる際に極めて有用である。 また、得られたVδ2Vγ9T細胞を単純に乳房外Paget病のCTOSと共培養するだけでは、抗腫瘍効果が見られなかったが、一連の実験の過程で、今後Vδ2Vγ9T細胞に対してさまざまな処理を加えることで乳房外Paget病に対して抗腫瘍効果を検討する上で貴重な情報が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、ヒト末梢血からのγδT細胞の分離、培養、そしてゾレドロネートを用いた増殖を試み、90%以上の純度でγδT細胞を作成することに成功した。しかしながら、ゾレドロネートによる刺激だけではCTOSに対する抗腫瘍効果は得られなかった。そのため今後の研究では、作成したγδT細胞に、いかに抗原特異的な抗腫瘍効果を導入することができるかどうかを検討していく必要がある。 まずは変異型p53遺伝子を持つがん細胞に蓄積するイソペンテニルピロリン酸 (IPP)やその代謝産物を認識するVγ9Vδ2 T細胞受容体 (TCR)を発現するγδT細胞の作成を試みる。また、黄色ブドウ球菌を感染させた樹状細胞がγδT細胞を活性化すること (J Immunol 2000)、細胞表面のToll様受容体 (TLR)8を刺激した単球がγδT細胞を活性化することを利用し、単球や樹状細胞などの抗原提示細胞の機能修飾によるγδT細胞の抗腫瘍活性の増強を試みる予定である。
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