研究課題/領域番号 |
21K08355
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
菅谷 誠 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (90334408)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 皮膚硬化 / ブレオマイシン |
研究実績の概要 |
本年度は、国立国際研究医療センターで飼育していたカポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子導入マウスを、研究者の所属する国際医療福祉大学成田キャンパスの動物実験施設に移動した。SPF環境施設に搬入するにあたってクリーニングが必要であったため、書類審査などの事務手続きも含めて半年を要した。その後、クリーニングの際に使用した外部業者において、帝王切開の際に用いられたマウスに遺伝子変異があったことが判明し、その遺伝子変異のないマウス系統を樹立するのに数か月を要した。具体的には納品された全てのマウスの尾を業者に送って遺伝子変異の有無を確認し、遺伝子変異のないマウスどうしを掛け合わせていった。ようやく安定して実験に使用するマウスが供給される状態になった。 報告書作成時点では、ブレオマイシンによる皮膚、肺の硬化の検討について、プレリミナリーな実験を1回行ったのみである。病理組織学的解析において、リンパ浮腫のあるカポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子導入マウスでは、ブレオマイシンによる皮膚硬化が減弱している可能性が見いだされた。一方、肺については、野生型マウスとの大きな差異は認められなかった。人間においてリンパ浮腫が持続すると、皮膚が次第に硬化することが観察されるため、これは当初の予想と反する結果である。しかし、硬化を減弱させるようなネガティブフィードバックの系の存在は十分考えられるため、今回の実験モデルでは皮膚硬化が弱まっていた可能性がある。硬化を減弱させている要因について、来年度以降解析を進める予定であり、これは将来的に治療に応用できる可能性があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国立国際研究医療センターで飼育していたカポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子導入マウスを、研究者の所属する国際医療福祉大学成田キャンパスの動物実験施設に移動した。SPF環境施設に搬入するにあたってクリーニングが必要であったため外部業者を利用したが、帝王切開の際に用いられたマウスに予期しない遺伝子変異があったとの報告があった。その遺伝子変異が実験結果に影響を与える可能性があったため、納品された全てのマウスの尾を業者に送って遺伝子変異の有無を確認し、遺伝子変異のないマウスどうしを掛け合わせていった。ようやく安定して実験に使用するマウスが供給される状態になるまでに数か月を要したため、予定よりも進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに遺伝子変異を除いたマウス系統は樹立できており、今後はブレオマイシンによる皮膚硬化の実験を繰り返し行う予定である。ブレオマイシンをマウスの剃毛した背部に4週間連日注射し、最終日に皮膚と肺を採取する。組織学的検討を加えるほか、real-time RT-PCRで線維化に関わる遺伝子の発現を検討する。PBSを連日注射したマウスを対照群とする。また今年度は、線維芽細胞の培養実験も開始する予定としている。具体的にはカポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子導入マウスと野生型マウスの背部皮膚を採取し、dispase処理で真皮細胞を精製した後にdishに撒き、付着していくる線維芽細胞を培養する。線維芽細胞は培養後も生体内にあった際の性質を維持していることが知られており、コラーゲン産生能をコラーゲン定量キットやreal-time RT-PCRで確認する。
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