研究課題
尋常性白斑は、斑状の脱色素斑を形成する自己免疫性皮膚疾患で、病理で真皮表皮境界部のリンパ球浸潤、表皮基底層に分布するメラノサイトの消失を認める。メラノサイト特異的CD8+T細胞が病態に関与することが知られているが、メラノサイトがどのように消失していくか、その分子機構は殆どわかっていない。最近、CD8+T細胞から放出されるIFN-γとTNF-αによって、メラノサイトは接着分子E-カドヘリンの発現が減少し、メラノサイトが基底層から剥がれ、上方に移動して、炎症を起こさずに消失することが報告された。細胞死には、アポトーシス、ネクローシスなど様々な形態が存在するが、細胞死後に残された細胞体は、核、ミトコンドリアなど多くの起炎物質を含み、不必要なものとして貪食細胞により除去される。ところが表皮細胞は、炎症を起こすことなく、核、ミトコンドリアなどのオルガネラを消失させ、表皮顆粒層にて細胞死を遂げた後、角層を形成する。我々の研究室では、独自のライブイメージング法を開発し、マウス表皮において、角層の内側にある顆粒層細胞の細胞死の過程では、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が約1時間上昇した後、Ca2+濃度が高いまま細胞内が酸性化することを発見した。以上の発見から、我々はメラノサイトの細胞死が、ケラチノサイト同様に細胞内Ca2+の上昇とそれに続く細胞内酸性化が関与しているか調べることとした。そして、表皮基底層にメラノサイトが密に分布するK14-SCFマウスとCa2+イメージングマウス(GCaMP3)、またはK14-SCFマウスと細胞内イメージングマウス(SASP-Venus-mCherryマウス)を交配、それらのマウスに尋常性白斑を誘導して、メラノサイトをライブイメージングする系を立ち上げた。
3: やや遅れている
達成度が遅れている要因として、表皮基底層にメラノサイトが密に分布するK14-SCFマウスとCa2+イメージングマウス(GCaMP3)、またはK14-SCFマウスと細胞内イメージングマウス(SASP-Venus-mCherryマウス)を交配し、尋常性白斑を誘導して、メラノサイトをライブイメージングする系を立ち上げるために時間を要したことが挙げられる。
1. メラノサイトの細胞死に適したライブイメージング整えた後、ケラチノサイトのように、メラノサイトが消失して過程で、細胞内Caと細胞内の酸性化が生じているか解析する。2. Tyr-Cre;Ai9;K14-Scfマウスに、尋常性白斑を誘導し、皮膚に白斑が出現し始める白斑誘導5週後に、尾の表皮からtdTomato陽性のメラノサイトや陰性のケラチノサイトをFACSAriaIIIで分取する。そしてRNAを抽出し、RNA-seq解析を行い、コントロール群と比較してどのようなシグナル経路や分子が活性化しているか調べる。特にメラノサイトの細胞内Caと細胞内の酸性化に関わる分子に注目する。3. 我々の研究室は、Plasmid injection法による表皮内にモザイク状に遺伝子を発現する方法(遺伝子を発現している細胞と、発現していない細胞が混在する状態)を確立した。故に、RNA-seqで得られた重要なケラチノサイトの分子にモザイク状に遺伝子破壊を行い、メラノサイトの細胞死が抑制されるか検証する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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