研究課題/領域番号 |
21K08363
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 寿行 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10396476)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臍帯血移植 / NK細胞 / KIRリガンド不適合 / 急性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
2022年度は東北大学病院において4例の急性骨髄性白血病に対する初回臍帯血移植が実施された。この内、1例はドナーレシピエント間のKiller-cell immunoglobulin-like receptor(KIR)リガンド不適合を伴う移植であり、移植後の骨髄単核球を分離後、凍結保存を行った。また、これまでに骨髄NK細胞の遺伝子発現の検討を行った24例について詳細な臨床情報の収集を行い、遺伝子発現変化との関連について解析を行った。移植後CMV再活性化を生じた例では、再活性化なしの例に比べ18遺伝子の発現が有意に2倍以上の上昇を認め、特にcytokine signaling, interferon signalingに関わる遺伝子群の上昇が確認された。感染から時間が経過した移植後3か月目においても、移植後CMV再活性化例ではNK細胞がより活性化した状態にあることが示された。その他にも、ドナーレシピエント間HLA不適合数が多い移植例で発現が亢進している遺伝子や、移植後非再発例において発現が高い遺伝子を同定した。さらに、KIRリガンド不適合がNK細胞成熟、増幅過程に及ぼす影響を検討する研究に関しては、NK細胞と共培養するための間葉系幹細胞(MSC)の作成を行った。KIRリガンド不適合となる組み合わせを作るため、複数の異なるタイプのMSCを樹立する必要がある。このため、骨髄検体を保存している一部の患者についてKIRリガンドグループの検索を実施、これらの中からHLA-C groupヘテロ(HLA-C1,C2)1例、HLA-C groupホモ(HLA-C1,C1)1例を選び、その骨髄保存検体を用いて、それぞれのMSCの樹立を行った。これらのMSCはNK細胞との共培養に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗が遅れている最大の理由として、KIRリガンド不適合を有する臍帯血移植例が少ないこと、臍帯血移植後の骨髄凍結検体の細胞数が想定以上に少ないことが挙げられる。2022年度も急性骨髄性白血病(AML)に対する初回臍帯血移植は4例、そのうちKIRリガンド不適合は1例にとどまった。例年であればAMLに対する初回臍帯血移植は、6-13例(2017年から2019年の実績)実施されており、これまでになく少なくなかった。コロナ禍で病棟入院制限などの影響を受けた可能性がある。また、骨髄単核球が凍結により失われていることを考え、凍結前検体の利用を考えたが、骨髄採取と同日に検体処理、解析の実施を行うことが毎回は困難であった。また、骨髄液採取量を増やすことも検討したが、患者負担、患者同意取得の問題もありすぐに実施することとができなかった。以上より、これまでに保存を行っている凍結検体を用いざるを得ない状況である。さらに、予定していた臍帯血の利用については、今年度も昨年度から引き続いて提供が再開されず入手が困難であった。臍帯血の購入も検討したが費用面での問題があり、難しいと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
移植後の患者検体を用いた研究では、骨髄単核球の凍結検体を用いざるをえず、細胞数が少なくても解析可能なnCounterによる遺伝子発現解析を中心とし、解析症例数を増やしていきたい。KIRリガンド不適合に関わらず移植後NK細胞の分離を行い、不適合移植例が十分得られない場合については、その他の臨床成績とNK細胞遺伝子発現の関連についても検討を行うことを考えている。また、臍帯血から分離したNK細胞を利用する見込みが立たないことから、健常人末梢血NK細胞を利用する方針に切り替え、すでに樹立したMSCとの共培養によるNK細胞機能変化について解析を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品納品の遅延によって生じたものである。令和5年度請求額と合わせて、物品の納品に必要な経費として使用する予定である
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