研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植後に発症する閉塞性細気管支炎などの非感染性呼吸器合併症は,予後が極めて不良であり病態解明も不十分である。これまでの基礎研究によりTh17細胞などのリンパ球に加え,マクロファージも病態に関与することが示唆された。神経ペプチドNPYは神経終末のみならず肺マクロファージからも産生され,肺線維化に関与する可能性がある。 Neuropeptide Y (NPY)は中枢神経系に広く発現する神経ペプチドで,神経系の細胞のみならず血球系細胞や気道上皮細胞にも発現している。NPYのY1受容体は血液系細胞を中心に広く分布し,Y1受容体からのシグナルによりT細胞はTh2反応に誘導される。 ハウスダスト誘導アレルギー性気道炎症モデルを用いて,NPY 欠損マウスではアレルギー性気道炎症,気道過敏性に関与する気道および全身のTh2 反応が減弱することを明らかにした。また、ブレオマイシン誘導特発性肺線維症モデルを用いて,NPY 欠損マウスでは肺線維化が増悪することを見出した。 次に、マイナー抗原不一致のドナーB6 →レシピエントB10.BRの系を用いた移植後の閉塞性細気管支炎(BO)マウスモデルを確立した。レシピエントマウスは、組織学的に線維化も含め評価し(NIH Image Analysis system),肺機能 (FlexiVent small-animal ventilator SCIREQ, Montreal, PQ, Canada)も合わせて測定し、BOに合致する結果が確認された。B6のNPY欠損マウス(Charles River)をドナーとした場合にはBOの悪化は見られなかった。一方、レシピエントをNPY欠損マウスにすると早期死亡が観察された。レシピエントは肺、肝臓のアポトーシスが進行しており、NPYはp53依存性のアポトーシスを抑制する可能性が示唆された。
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