研究課題/領域番号 |
21K08374
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
野坂 生郷 熊本大学, 病院, 教授 (90398199)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | HTLV-1 / ATL / モガムリズマブ |
研究実績の概要 |
成人T細胞白血病(ATL)における治療反応性とゲノム変異やプロウイルスのタイプの解析をするためにプロウイルスのタイプの同定を行った。また病態の異なる複数のATL症例における免疫関連因子を解析するため、ATL症例における免疫形質の多様性をシングルセル質量分析法であるCyTOFを使って解析し、ATL細胞の大多数は制御性Tリンパ球様の形質を呈した。ATAC-seqの結果から急性型に比して慢性型ATLではクロマチン構造が単球に近いことも判明した。またATLでは自然寛解が多いことが知られており、このATL細胞の樹状細胞への変換が関連している可能性がある。実際、当科で経過観察を行っている一過性に腫瘍細胞が増加したATL慢性型の患者において、樹状細胞様ATL細胞の出現後に自然寛解を来した症例を経験した。現在、当該症例の検体を用いて免疫学的な解析を進めている。また、ATLは元々免疫原性が高いと考えられており、HTLV-1に対する宿主免疫の低下、疲弊の関与が考えられ、免疫回避が起こることで病態の進行や発症に関与している可能性を考えている。ケモカインレセプターの1つであるCCR4に対する抗体であるモガムリズマブは、現在ATLの治療薬として実臨床で使用されているが、その効果には直接的な殺ATL細胞作用に加え、制御性Tリンパ球(Treg)抑制による抗腫瘍/ウイルス免疫の活性化が関与していると考えられている。モガムリズマブ治療が効果的であった症例についてシングルセルでRNAseqを行い、増殖因子や免疫関連因子の解析を行った。Mogが有効であった症例の投与前後における末梢血単核球の発現プロファイルをsingle-cell RNA-seq(scRNA-seq)にて評価し、ATL発症時のCD8+ T細胞においては非古典的Wnt経路に関連する分子、シグナル経路が活性化している可能性を示唆した所見を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
成人T細胞白血病症例の登録、治療反応性について、経時的なサンプルを使用し、解析している。また免疫形質等の知見も得つつあるが実施に時間を要しておりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、さらに免疫関連因子の関連性と治療反応性について検討する。さらに予後との関連性詳細に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ATL症例のプロウイルスタイプと治療反応性、細胞性免疫の相関について検討する。臨床検体を用いてTax, HBZに対する細胞性免疫応答についての解析を進める。さらに治療に関する免疫応答について、同種造血幹細胞移植症例、および抗CCR4抗体治療で、免疫細胞の評価を行う。
|