研究課題
鉄芽球性貧血モデル細胞における網羅的解析: 昨年から継続して鉄蓄積機構の解明を目的に,分化誘導条件下で本研究室で樹立した先天性鉄芽球性貧血モデル細胞株(CSA)であるALAS2変異細胞およびSLC25A38変異細胞の発現をRNA-seqを用いて網羅的に野生細胞株HUDEP-2の発現との比較を行なった。その解析結果から、鉄代謝に関与する代表的な複数の因子のいずれにおいても分化誘導後における発現に有意な発現変化が認められなかった。この結果から、ALAS2およびSLC25A38の変異による鉄蓄積は、鉄代謝の変化によらないことが考えられた。ALAS2変異細胞におけるferroptosisの検討: 鉄芽球性貧血における無効造血の原因は、ferroptosisであると予測されており、分化誘導により鉄がミトコンドリアに蓄積するALAS2変異細胞においてferroptosisが生じているか、細胞膜の脂質過酸化の検出による検討を行なった。その結果、野生型でも脂質の過酸化が生じていたが、ALAS2変異細胞では野生型よりその割合が高かった。また、ferroptosis阻害剤の使用によって脂質過酸化の抑制が観察された。この結果より、ALAS2変異細胞では野生型細胞より高い頻度でferroptosisが生じていると考えられた。本研究の結果、少なくとも用いたCSAモデル細胞株における鉄の蓄積は、鉄代謝が鉄の蓄積やヘム合成低下による影響を受けずに野生型と同等の鉄移入量があることで余剰鉄がミトコンドリアに蓄積し、余剰鉄がferroptosisに関与する可能性が考えられたが、更なる検討が必要である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 105210~105210
10.1016/j.jbc.2023.105210