研究課題
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(以下MPNと略す)は、造血幹細胞レベルに体細胞変異が生じて発症する造血器の腫瘍である。MPN患者の予後は概ね良好であるが、骨髄の線維化を呈する患者では、様々な全身症状によるQOLの低下が生じるだけではなく、急性白血病を発症するリスクが高く、予後不良である。しかし、根治は、治療関連死のリスクのある造血幹細胞移植に限られていることから、根治を目指した有効な治療薬の開発が切望されている。申請者は、CALR変異遺伝子のタイプによる腫瘍原性の違いを規定するメカニズムを明らかにするため、タイプ1とタイプ2の表現型の違いが観察可能な、in vitroおよびin vivoのアッセイ系を構築している。そこで、2021年度は、CALR変異遺伝子のタイプにより異なる腫瘍原性を規定しているメカニズムを明らかにし、骨髄繊維化の発症を促進する因子を同定するため、MPN病態モデルマウスの作成を行なった。具体的には、CALR変異遺伝子を分化マーカー陰性、c-Kit陽性、Sca1陽性の造血幹細胞(LSK細胞)に発現させてから、マウスに移植し、変異型CALRの発現による腫瘍性巨核球の増生や骨髄の線維化の観察されるか確認を行なった。その結果、移植後、2ヶ月目より腫瘍性巨核球の増生が見られ、移植後6-9ヶ月程度で骨髄の繊維化が観察されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
CALR変異遺伝子により骨髄の繊維化が観察可能なMPN病態モデルマウスが作成されたことから、概ね順調に進展していると考える。
in vitroとin vivoのアッセイ系、CALR変異遺伝子により骨髄の繊維化が観察可能なMPN病態モデルマウスを用いてCALR変異遺伝子のタイプによる腫瘍原性の違いを規定する分子を明らかする予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 271
10.1038/s41467-021-27928-8
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