研究課題/領域番号 |
21K08377
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
稲葉 浩 東京医科大学, 医学部, 講師 (90183178)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血友病 / 第VIII因子 / 薬物動態試験 |
研究実績の概要 |
本研究では、血液凝固第VIII因子(FVIII)の半減期に影響するフォン・ヴィレブランド因子(VWF)のクリアランスが、どのような遺伝的要因によって規定されるのかについて、特にVWF、およびそのクリアランスに関わるレセプター遺伝子の詳細な検討から明らかとし、より優れた薬物動態をもつ新規血友病A治療薬の開発に応用することを目指す。 今年度は以下の実施計画に基づいて研究を進めた。 1)医学倫理委員会での承認を得る:本研究では二つの承認、東京医科大学医学倫理委員会で研究全体に対する承認と、東京医科大学病院倫理委員会で半減期の算出に用いる集団薬物動態サービス(WAPPS-Hemo)を使用することに対する承認、を得た。 2)対象者(血友病A患者)の臨床データ収集と第VIII因子(FVIII)の血中半減期算出:東京医科大学臨床検査医学科で診療を受けている血友病A患者417名の診療録から、これまでの診療のなかでFVIII製剤の輸注試験を行ったことがあり、WAPPS-Hemoで半減期を算出可能なデータを持つ患者(約60名)を抽出し、そのデータを収集した。また、その他解析に必要とする患者データ(年齢、体重、ABO式血液型、使用製剤および投与量など)も収集した。得られたデータをもとに、現在、WAPPS-Hemoを用いた解析に同意が得られた患者についてFVIIIの血中半減期を算出している。 3)対象者DNAの採取:患者の負担を可能な限り軽減させることを優先し、本研究のための採血は行わず、先行の別研究で二次利用の同意が得られてDNAを用いることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の医学倫理委員会での審査は、倫理指針の変更時でもあったこともあり、2021年6月1日に申請書を提出したが、最終的に承認が得られたのは2022年1月21日となってしまった。また研究計画時には予定していなかったWAPPS-Hemo使用に関する承認を、病院倫理委員会から得ることが追加され、この承認にも予想外の時間を費やす必要が生じてしまった。 当初、本研究では同意を得られた対象者に対して薬物動態試験を施行することで正確なFVIIIの半減期を算出することを計画した。しかしながら、被験者の負担が大きいことを鑑み、薬物動態試験は可能な限りを行わないようにすべきであるとの指摘があり、精度が低下する可能性はあるものの、これまでの診療録の調査からすでに薬物動態試験を行ったことのある患者を抽出し、利用可能なデータを取得するように方針を変換した。その結果、およそ60例のデータが参照できることが確認された。このうちどのくらいの患者でWAPPS-Hemoを用いた解析に同意が得られるかは未知数であるが、目標とした症例数(30例)はクリアできるであろうと予測された。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べたように、倫理委員会の承認を得るまでに予想をはるかに超える時間を要してしまった。今後は生じた遅れを取り戻すように進めていく。 可能な限り早期に、薬物動態試験のデータが利用可能であることが判明しWAPPS-Hemo解析に同意が得られた患者のFVIII半減期を求める作業を完了し、実際に遺伝子解析を行うべき対象者の抽出と同意の取得を進める。 また並行して、本研究の中心となるVWFおよびそのレセプター遺伝子の解析に向け、次世代シークエンス解析用のパネルの設計を進め、今年度後半には実施できるよう準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、本年度は薬物動態試験を行うはずであったが、被験者の負担軽減を考慮し診療録での調査から必要なデータを取得することに変更したため、予定していた消耗品費を用いることなく研究を進めることとなったこと、また、本研究に関する倫理委員会の審査が想定以上に時間を要してしまったこと、さらにコロナ禍で参加予定の学会がすべてオンラインで開催され、予定していた旅費を使用することがなかったことにより、計画通りに予算を使用することなく次年度に使用額が生じた。 次年度では、遺伝子パネルを用いた次世代シークエンスをメインとした遺伝子解析を施行する予定である。パネルの設計・作成に要する費用は現状では不確定であるが、予定金額を超過することが予想される。また用いる各種試薬も国際情勢に影響され価格が高騰することも想定されることから、本年度の助成金を次年度予算の超過分として使用する。
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