研究課題/領域番号 |
21K08378
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 正幸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70790913)
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研究分担者 |
本田 浩章 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40245064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / IBD / UTX |
研究実績の概要 |
エピジェネティクス制御の破綻が造血器腫瘍や自己免疫疾患の発症・維持に重要な役割を果たしている。骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome, MDS) は、造血細胞の異形成、無効造血、白血病への移行を特徴とする難治性造血器疾患である。MDSには自己免疫疾患が10~30%と高頻度に合併することが古くから知 られているが、その理由は不明である。申請者はヒストン脱メチル化酵素UTX (ubiquitously transcribed tetratricopeptide repeat, X chromosome) 欠失マウスを作製したところ、一部のマウスにMDS様の病態に加えて自己免疫疾患の病像を呈することを見出した。さらに、UTX欠失マウスはCD4+T細胞の頻度が著しく減少していることを確認しており、免疫抑制機構の破綻が示唆された。本研究はMDSと自己免疫疾患の合併疾患モデルであるUTX欠失マウスにみられる免疫異常の詳細な解析を通じて、両疾患に存在する共通の分子メカニズムによる可能性に着目し、これらを明らかにすることで、病態理解を深め、新規治療法の開発につながる研究基盤を構築することを目的とする。本年度は自己免疫疾患におけるUTXの役割を解明する目的で、CD4T細胞特異的にUTXを欠失しているマウスを導入して自己免疫疾患誘導マウスモデルの作製を試み、新しい実験系を確立した。また、UTX欠失によるT細胞の分化誘導に与える影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、自己免疫疾患におけるUTXの役割を解明する目的で、マウス自己免疫疾患誘導モデルとして免疫不全マウスに,naive T細胞であるCD4+CD45RBhigh T細胞を移入することにより大腸炎を発症させるマウス大腸炎誘発実験モデルを用いて、WtおよびUTX欠失マウス由来 naive T細胞を移入したところ、Wtでは著明な腸管肥厚をともなう腸炎の形態と共に体重減少が認められたが、UTX欠失ではこれらの症状の緩和を確認することができた。次に、UTX欠失がT細胞の分化誘導に与える影響について、UTX欠失マウスおよび Wtマウスの脾臓から naive T細胞を分離し、抗CD3/CD28抗体,IL-2で刺激後、TGF-b, IL-6, IL-12などのサイトカインによりTh1, Th17, Tregへの分化誘導を行い、各サブセットの分化誘導能に異常がないか検証した。UTX欠失マウス由来 naive T細胞はWt由来 naive T細胞に比べ、Tregへの分化が亢進すると共に、Th17への分化は減弱するという予備実験結果を得ており、この結果は大腸炎誘発に関与するTh17/Tregのバランスに関与しているものと考えられる。現在、UTXの欠失によって変動する遺伝子を同定するために、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現プロファイリング解析の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今回確立したマウス自己免疫疾患誘導モデルを用いて、大腸炎を発症した腸局所や腸間膜リンパ節由来のCD4+T細胞のFlow cytometry解析によりTh1, Th2, Th17, Tregのサブセットに差異はないかを確認する。さらにRNA-seq による網羅的遺伝子発現解析を行い、UTX の欠失によって変動する遺伝子を同定したいと考えている。また、GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)を用いて、活性化・不活化した pathway およびその制御に関与する因子を明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
CD4T細胞特異的にUTXを欠失しているマウスを樹立し、増やすのに時間がかかり、このマウスを用いた自己免疫疾患誘導モデルという新しい実験系の確立が遅れてしまったため、当初、計画していたRNA-seq による網羅的遺伝子発現解析を後で行うことにしたことから予定していた使用額にはならなかった。
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