研究実績の概要 |
近年、エピジェネティクス制御の破綻が自己免疫疾患の発症・維持に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきている。申請者はヒストン脱メチル化酵素UTX (ubiquitously transcribed tetratricopeptide repeat, X chromosome) 欠失マウスを作製し、自己免疫疾患におけるUTXの役割を解明する目的で、マウス自己免疫疾患誘導モデルとして免疫不全マウスに,naive T細胞であるCD4+CD45RBhigh (naive T)細胞を移入することにより大腸炎を発症させるマウス大腸炎誘発実験モデルを用いて、WtおよびUTX欠失マウス由来 naive T細胞を移入したところ、Wtでは著明な腸管肥厚をともなう腸炎の形態と共に体重減少が認められたが、UTX欠失ではこれらの症状の緩和を確認することができた。次に、UTX欠失がT細胞の分化誘導に与える影響について、UTX欠失マウスおよび Wtマウスの脾臓からnaive T細胞を分離し、抗CD3/CD28抗体,IL-2で刺激後、TGF-b, IL-6, IL-12などのサイトカインによりTh1, Th17, Tregへの分化誘導を行い、各サブセットの分化誘導能に異常がないか検証した。UTX欠失マウス由来naive T細胞はWt由来naive T細胞に比べ、Tregへの分化が亢進すると共に、Th17への分化は減弱するという予備実験結果を得ており、この結果は大腸炎誘発に関与するTh17/Tregのバランスに関与しているものと考えられる。現在、naive T細胞を用いた次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現プロファイリング解析を行い、UTXの欠失によって変動する遺伝子を同定を進めている。
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