造血組織である骨髄から末梢血へのHSCの遊走は感染時の生体防御などにおいて重要な役割を果たしているほか、末梢血造血幹細胞移植では移植するHSCが十分量得られるか否かを左右する重要な要素のひとつと考えられる。この遊走の機序に関して本研究では骨髄の酸素環境の制御系がHSCの遊走能に大きく関与することを新たに示した点などにおいて学術的意義を持つと考えらえる。また、本研究成果から得られた知見をもとに骨髄の酸素環境及びHSCの遊走能への人為的な介入を実現させることで、年々増加の傾向がみられる末梢血幹細胞移植が適応となる造血器疾患等の治療成績向上の一助になるなどの社会的意義に結びつく可能性が考えられる。
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