我々は、先行的に実施したRNA-seqで得られた発現情報に基づき、AYA・成人B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の新規サブタイプ(CDX2サブタイプ、IDH1/2サ ブタイプ)の存在を明らかにした。しかしながら、発現解析のみで新規サブタイプの存在を強く証明することは困難である。本研究では、AYA・成人B-ALLに対 し、Target-capture DNA sequencing (TC-DNA-seq)、全エクソンシーケンス、メチル化解析を実施することにより、変異情報・コピー数異常・メチル化情報から多角的に同サブタイプ存在の妥当性を検証する。 本研究期間中に、78症例のTC-DNA-seq、6症例の全エクソンシーケンス、16症例のメチル化解析を実施した。CDX2サブタイプには、1q領域の増幅が高頻度で認められることを明らかにした。IDH1/2サブタイプでは、他の病型に比較して、高メチル化フェノタイプを示すことも明らかにした。これらのゲノム上の特徴は、両サブタイプの存在を強く示唆するものである。 最終的には、分子生物学的解析と臨床的解析の統合的解析を実施し、両サブタイプともに、単変量解析および多変量解析で独立した予後不良因子あることを明らかにした。小児ではほとんど認められないサブタイプであり、AYA・成人が予後不良である一因になっていると考えられた。今後の送別化治療の基盤として、臨床的に重要となる知見が得られた。
|