研究課題
本研究では、ヒト急性移植片対宿主病(GVHD)組織に浸潤するT細胞について、その細胞起源も含めて詳細に解析し、GVHD重症度や治療反応性などGVHD臨床経過との関連を明らかにすることを目指している。当該年度は、移植後に急性GVHDを発症しかつ一次治療に不応性となった3症例から、GVHD一次治療開始前と一次治療開始後(二次治療開始前)の2回、GVHD皮膚生検組織の提供を受けた。そして、それらの生検組織に浸潤するT細胞のTCR-Vβ CDR3塩基配列を、NGSを用いて網羅的に解析した。得られたTCR塩基配列から各TRBV familyの比率を一次治療の前後で比較したところ、いずれの症例においても構成する各TRBV familyの比率は、治療前後で大きく変化していた。また、GVHD皮膚組織浸潤T細胞のうち比較的高頻度(頻度1%以上)を示したTCRについて、その頻度の変化を一次治療の前後で比較したところ、いずれの症例においても一次治療開始前に高頻度だったT細胞クローンの多くは縮小し、代わって一次治療前には認めなかった新たな高頻度クローンが増幅していた。また、ある1症例の急性GVHD皮膚生検組織から5つのT細胞クローンの分離に成功し、STR法を用いてそれぞれの細胞起源を解析した。するとその内4つのT細胞クローンはドナー由来だったが、GVHD皮膚浸潤T細胞全体の23%を占めたある1つの高頻度T細胞クローンはレシピエント由来だった。現在さらに2症例から生検皮膚組織の提供を受け、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
患者からのGVHD組織の検体収集は順調に進んでおり、またNGSを用いた網羅的TCR塩基配列の決定やT細胞クローンの分離、細胞起源の同定などの実験系もきちんと機能しており、これまでのところ本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
実験系は機能しており特に問題はない。今後は、移植患者に本研究の意義等について丁寧に説明し、さらに多くの検体の提供が得られるよう努力する。
理由:購入予定だった試薬が当該年度内に納品できず、その支払いを翌年度に繰り越したため。使用計画:上述の通り、試薬代(物品費)として使用する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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