研究課題
日本造血・免疫細胞療法学会のデータベースを用いて、2011年から2020年に造血器腫瘍に対してHLA不適合血縁者間移植を実施した1037例を後方視的に解析し、HLA不適合血縁者間移植におけるHLAエピトープの意義を検討した。542人の患者が移植後エンドキサンを用いたGVHD予防法(PTCy)を受け、495人の患者が抗胸腺細胞グロブリンを用いたGVHD予防法(ATG)を受けた。また、GVH方向のPredicted Indirectly ReCognizable HLA-Epitopes direction presented on HLA class I (PIRCHE-I)を定量化した。PIRCHE-I値は0から58(平均、12.2)であった。PTCyを受けた高リスク疾患患者において、PIRCHE-Iが高いほど再発のリスクが有意に低く、生存率が向上した。ATGを受けた高リスク疾患患者において、PIRCHE-Iが高いほど、再発のリスクが有意に高くなったが、生存には影響しなかった。これらの知見は、HLA不適合血縁者間移植後のT細胞エピトープ適合性の影響にGVHD予防法による差があることを示唆している。次に、Eurocordと日本造血・免疫細胞療法学会による共同研究を実施し、2000年から2018年の間に臍帯血移植を受けた18~75歳の悪性リンパ腫患者を対象として解析を行った。欧州のレジストリから496人、日本のレジストリから1150人の患者が含まれた。TBIを含む移植前処置は、両コホートにおいて優れた生存に寄与した。興味深いことに、HLA不適合数2個以上による生存への影響は、欧州のコホートでは有意であったが、日本のコホートでは有意ではなかった。HLA不適合の影響は2つのレジストリで異なっており、集団の違いや危険因子を個別に分析することの重要性が示された。
2: おおむね順調に進展している
問題なく進捗している。
血縁者間移植の症例に関して、HLAMatchmakerおよびPIRCHEを用いたHLAエピトープの意義を欧州レジストリにおいても検討する。また、網羅的なHLA情報、HLA及びHLA提示ペプチドのエピトープ情報、並びに詳細な移植臨床情報を対象とする機械学習を用いた予後予測システムを開発する。
Eurocordとの共同研究において、コロナ禍のため、対面での会議が2022年度も実施できなかった。2023年度は海外渡航の許可が得られたため、オンラインに加えて対面での会議も実施予定である。
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