研究実績の概要 |
本研究では、CXCL12-CXCR4軸による造血幹細胞制御に必須の細胞内分子を網羅的に探索する。造血幹細胞は、ニッシェと呼ばれる骨髄の特別な微小環境によって維持されている。造血幹細胞ニッシェの主要な構成要素のひとつは、CXCL12、KITL、FOXC1、EBF3を特異的に高発現する特別な間葉系幹細胞で、CXCL12-abundant reticular (CAR) 細胞と呼ばれる (Morrison and Scadden, Nature 2014; Aoki et al., Br J Haematol 2021)。CXCL12-CXCR4軸は造血幹細胞の骨髄へのホーミング・骨髄での維持に必須であるが、造血幹細胞においてCXCL12に対する応答性を制御している遺伝子は完全には明らかにされていない。CXCL12-CXCR4軸による造血幹細胞制御に必須の細胞内分子を網羅的に探索するために、ゲノムワイドCRISPRスクリーニング法 (Koike-Yusa et al., Nat Biotechnol 2014; Tzelepis et al., Cell reports 2016) をin vitroでのケモタキシスアッセイに応用した独自にスクリーニング系を考案した。Cas9-GFPを安定的に発現させた白血病細胞株に、CXCR4に対するgRNAを導入したところ、細胞表面のCXCR4タンパク発現量は著減し、CXCL12に対するケモタキシス活性は20%以下に低下することを確認した。このCas9-GFP発現白血病細胞株を用いて、ゲノムワイドCRISPRスクリーニング法とCXCL12に対するケモタキシスアッセイを組み合わせた新規スクリーニング系を構築した。本スクリーニングにより、CXCL12に対するケモタキシスに必須の遺伝子として、既知のCXCR4やRHOAなどに加えて、複数の新規遺伝子を同定することができた。
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